第2作業部会(影響・適応・脆弱性)

第2作業部会会合が平成26年3月25日-29日、横浜市で開催され、観測された影響と将来の影響及び脆弱性について地域・分野別に評価されました。影響の軽減のために適応が重要であることが示された平成19年の第4次報告書から6年ぶりとなります。

第2作業部会における主なポイント

観測されている影響、脆弱性、適応

気候変動の緩和策・適応策の関係
気候変動に起因する観測された影響

ここ数十年、気候変動の影響が全大陸と海洋において、自然生態系及び人間社会に以下のよう な影響を与えています。(参考右図)

  • 水資源への影響(水量や水質)
  • 陸域、淡水、海洋生物の生息域の変化等
  • 農作物への影響

また、熱波や干ばつ、洪水、台風、山火事等、近年の気象と気候の極端現象による影響は、生態系や人類に対して著しい脆弱性や曝露を与えていると報告されています。

将来のリスクと適応の機会

将来的リスクとして「気候システムに対する危険な人為的干渉」による深刻な影響の可能性が指摘され、確信度の高い複数の分野や地域に及ぶ主要なリスクとして、以下の8つが予測されています。

複数の分野地域におよぶ主要リスク
複数の分野地域におよぶ主要リスク

  1. 海面上昇、沿岸での高潮被害などによるリスク
  2. 大都市部への洪水による被害のリスク
  3. 極端な気象現象によるインフラ等の機能停止のリスク
  4. 熱波による、特に都市部の脆弱な層における死亡や疾病のリスク
  5. 気温上昇、干ばつ等による食料安全保障が脅かされるリスク
  6. 水資源不足と農業生産減少による農村部の生計及び所得損失のリスク
  7. 沿岸海域における生計に重要な海洋生態系の損失リスク
  8. 陸域及び内水生態系がもたらすサービスの損失リスク

適応策は一部の計画に組み込まれつつあり、限定的ではあるが、実施されている適応策があると報告されています。

アジアにおける適応事例としては、早期警戒システムや統合的水資源管理、アグロフォレストリー(※)、マングローブの植林を通じて促進されているなど、一部の地域計画に組み込まれつつあり、限定的であるが実施されていると記述されています。

(※)アグロフォレストリーとは
樹木を植栽し、樹間で家畜・農作物を飼育、栽培する農林業

将来のリスクの管理とレジリエンスの構築

将来のリスクの管理とレジリエンスの構築
気温の変化に伴う主要なリスクと適応の見通し

将来に関しては、温暖化の進行がより早く、大きくなると、適応の限界を超える可能性があります。政治的、社会的、経済的、技術的システムの変革により、効果的な適応策を講じ、緩和策を合わせて促進することにより、レジリエント(強靭)な社会の実現と持続可能な開発が促進されるとしています。

日本への影響

日本への影響
2100年末に予測される日本への影響

環境省では、IPCCの新しいRCPシナリオを用いて、日本への影響予測、リスク低減に対する適応策の効果を評価した報告書(※)を公表しました。温室効果ガス排出量が最大で濃度上昇の最悪ケースRCP8.5シナリオでは、2100年に右図のような影響が日本国内での発生が予測されると報告しています。

(※)環境省 環境研究総合推進費 S-8 2014年報告書
地球温暖化「日本への影響」-新たなシナリオに基づく総合的影響予測と適応策-