IPCC第56回総会及び同パネル第3作業部会(WG3)第14回会合が2022年3月21日(月)から4月4日(月)にかけてオンラインで開催され、第5次評価報告書(AR5)WG2以来8年ぶりとなる第6次評価報告書WG2報告書(AR6/WG2)が2月28日(月)に公表されました。
目次
主な結論(概要)
最近の開発と現在のトレンド
- 人為的なGHG総排出量は、2010年~2019年の間、増加し続けた。
- 2010年~2019年の期間の年間平均GHG排出量は、過去のどの10年よりも高かった。
(増加率は2000年~2009年よりも低かった)
- 温暖化を2℃に抑える可能性が高いシナリオにおける年率4%前後の削減率を数年間連続して達成した国も複数存在する。
- 2010年~2019年にかけて、太陽光発電、風力発電、リチウムイオン電池の単価が継続的に低下し、いくつかの再エネ単価が化石燃料価格より低下している。これにより導入も大幅に加速している。
- いくつかの国や地域においては、電力システムのほとんどを再生可能エネルギーに転換している。
- COP26よりも前に発表された「NDCs(パリ協定の国別温暖化対策貢献)」をもとに、2030年の世界のGHG排出量では、21世紀中に温暖化が1.5℃を超える可能性が高い見込み。
- 2030年半減するための対策オプションは存在する。全ての部門・地域において早期的に野心的な緩和策を実施しないと1.5℃を達成することはできない。
地球温暖化抑制のためのシステム変革
温暖化を1.5℃未満に抑えるために(1.5℃排出経路)
- 世界全体のGHG排出量のピークを2025年以前に持ってくる必要があり、2030年までに2019年比で43%の削減が必要である。
CO2除去技術CDR(Carbon Dioxide Removal)
- GHGの正味ゼロを達成するためには、CO2除去技術(CDR:Carbon Dioxide Removal)の導入は避けられないが、大規模な普及には実現性や持続可能性に対処するアプローチが必要
2030年の削減ポテンシャル
- 100米ドル/t-CO2までの緩和策で、世界全体のGHG排出量を2030年までに少なくとも2019年レベルの半分に削減することが出来る。うち、20米ドル/t-CO2未満の技術が半分以上を占める。
緩和、適応、持続可能な開発の連携
- 気候変動の影響を緩和し、適応するための加速した衡平な気候行動は、持続可能な開発のために非常に重要である。
- 持続可能な開発、脆弱性及び気候リスクの間には強い関連性がある。特に開発途上国においては、経済的、社会的、制度的資源が限定的であるため、脆弱性が高く、適応能力が低い結果となる場合が多い。
緩和策(対策)の強化
- 緩和策を遅らせることは、後に大規模で急速な緩和策の展開が必要となり、より大きな障壁に直面する。緩和策を早期に展開することは、障壁の低減に繋がり、1.5℃経路の可能性を高めることになる。
- 緩和策の大規模展開の実現可能性を高めるためには、その障壁を取り除くとともに、可能にする条件を強化することが必要。
【気候ガバナンス】
各国の事業に基づき、法律、戦略、制度を通じて行動し、多様な主体が相互に関わる枠組みや、政策策定や実施のための基盤を提供することにより、緩和を支援する。
【政策手段】
規制や経済的手法は、既に排出削減の効果が証明されている。いくつかの施策は、規模を拡大し、より広範に適応すれば、大幅な排出量の削減を支援し、イノベーションを刺激しうる。
【ファイナンス】
資金の流れは、全ての部門と地域にわたって、緩和目標の達成に必要なレベルに達していない。また、明確な政策の選択肢と政府および国際社会からのシグナルが資金フローの拡大に繋がる。
【国際協力】
野心的な気候変動緩和目標を達成するための極めて重要な成功要因である。