IPCC第55回総会及び同パネル第2作業部会(WG2)第12回会合が2022年2月14日(月)から2月27日(日)にかけてオンラインで開催され、第5次評価報告書(AR5)WG2以来8年ぶりとなる第6次評価報告書WG2報告書(AR6/WG2)が2月28日(月)に公表されました。
目次
主な結論(概要)
気候変動の影響・リスク
- 気候変動は、自然や人間、生態系に対して広範囲にわたる悪影響と、それに関する損失・損害を引き起こしている。
- 約33~36億人が気候変動に対して非常に脆弱な状況下で生活している。
- 気候変動と合わせて、持続可能ではない海洋及び土地の利用、生息地の破壊、都市化の拡大、不衡平によって、人間の脆弱性が増大している。
- 気候変動は、短期(2021~2040年)のうちに1.5℃に達しつつあり、後戻りできない複数の危機を引き起こし、生態系及び人間に対してリスクをもたらす。
- 中期~長期的(2040年より先)のリスクとして 陸域の生態系では、1.5℃の気温上昇で、3~14%は非常に高い絶滅のリスクに直面する可能性が高く、このリスクは、2℃の気温上昇では3~18%、3℃で3~29%、5℃で3~48%に上昇する。
- 気候変動の影響とリスクは複雑化しており、管理が困難になっている。
- 地球温暖化が、次の数十年間またはそれ以降に、一時的に1.5℃を超える(オーバーシュート)場合、1.5℃以下にとどまる場合と比べて、深刻なリスクに追加的に直面する。
気候変動への適応
- 気候変動に対する適応の計画および実施は全ての地域おいて増加しているものの、そのほとんどが不均衡に実施されており、気候リスクの低減には、適応対策の実施の加速が重要となっている。
- 気候変動への適応を行うことで、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた中で便益をもたらすものもある。
- 現在実施されている適応の水準と気候変動のリスク低減に必要な水準の間にギャップが存在する。特に低所得の地域において適応のギャップが存在している。
※適応のギャップとは…実際に実施された適応策と社会的に設定された目標との間の差異 - 人々や自然に対する気候変動のリスクを低減しうる、実行可能で効果的な適応のオプションが存在する。(例えば、水資源の管理、食料システムの改善、インフラの設計・計画など)
- 積極的に気候変動への適応の取組を実施した場合であっても、全ての損失や危機を防ぐことはできない。
気候にレジリエントな開発
レジリエントな開発とは...
- 気候変動の影響に備える(リスクを低減する)(適応)
- 温室効果ガスの排出量を減らす(緩和)
- 生物多様性を維持する
- SDGsを達成する
以上4つに配慮した開発のこと。
- 気候にレジリエントな開発は、行政のみならず様々な主体(※)と協働・パートナーシップを醸成することによって促進される。 ※行政、市民社会、教育機関、科学機関及びその他の研究機関、報道機関、投資家、企業など
- 次の10年の社会の選択・行動によって、中長期的な経路によって実現される気候に対応可能な開発が、どの程度強まるかあるいは弱まるかが決まる。
緩和とは?
気候変動による人間社会や自然への影響を回避するために、温室効果ガスの排出を削減と吸収の対策を行い、気候変動を極力抑制すること。
緩和の例:節電・省エネ、再生可能エネルギーの活用、エコカーの普及など。
適応とは?
緩和を最大限実施しても避けられない気候変動の影響に対しては、その被害を軽減し、よりよい生活ができるようしていくこと。
適応の例:熱中症予防、農作物の品種開発、防災のためのインフラ整理など。