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COPへの「参加」とは?

 今日は、COPへの「参加」について、解説します。

 COPは、温暖化問題に様々な観点から取り組んでいる人が一堂に会する場です。1日の記事でも書いたように、今回のCOP21は、2020年以降、すべての国が参加する温暖化対策の新しい国際枠組みをどのようなものにするかについて合意する予定なので、非常に注目度が高い会議です。


写真1:初日のリーダーズ・フォーラム(首脳級会合)開会セレモニーの様子。かなり厳しい入場制限をかけてもなお、本会議場にこれだけの人がいます。

 COP21の参加登録者数は、36,276人にのぼっています。COP20の参加登録者数は12,531人でしたから、昨年の3倍近くの人が登録していることになります(後述しますが、COPへの参加を希望する人全員が参加登録できるわけではありません)。内訳を見ると、政府関係者:23,161名、国連関係者:638名、専門機関等:453名、国際機関:1,226名、NGO:7,094名、メディア:3,704名、となっています。私は、国立環境研究所から参加登録をしており、上記の区分では、NGOに含まれます。


写真2:作業や談笑をしながら自転車を漕ぎ、PCやタブレットなどの充電をする参加者たち(写真提供:国立環境研究所環境計測研究センター Pang Shijuan氏)

 温暖化COPは、政府間交渉の会議なので、各国の政治家や、温暖化問題に関連する省庁関係者同士の議論がメインです。国際機関等からの参加者は、交渉に関連する情報をインプットします。メディアからの参加者は、交渉の進捗状況などを取材して、このCOPの場で何が起こっているかを知らせています。では、NGOは、どのようにCOPに参加しているのでしょうか?


写真3:モニターを見る参加者たち。左のモニターには交渉会議の中継が、右のモニターにはその日に予定されている会議やサイドイベント等のリストが映し出されています。

 温暖化COPに参加しているNGOというと、環境保護団体を思い浮かべる方が多いのではないかと思いますが、それだけではありません。私の所属機関である国立環境研究所は、研究NGO(RINGO)のグループに属しています。他にも、産業界NGO(BINGO)、若者NGO(YOUNGO)、農民連盟(Farmers Union)、少数民族に関するNGOなど、実に多様なNGOが気候変動COPに関わっています。

 NGOがCOPに参加する方法はいくつかあります。1つ目は、サイドイベントの開催とこれへの参加です。COP期間中、多くの各国政府、国際機関、研究機関などが、自らの成果のお披露目のためにサイドイベントを開催します。もともとは、お昼休みと会議終了後の夕方の時間帯だけでしたが、近年は、開催希望が多いため、サイドイベント開催時間を拡大しています。国立環境研究所は、12月7日の晩に、日本の外務省と環境省、マレーシア工科大学(UTM)、地球環境戦略研究機関(IGES)と共催で、公式のサイドイベント(プログラムはこちら)を開催するほか、日本パビリオン(政府による展示及びイベントスペース)でも、複数のサイドイベントを主催/共催して、最新の研究成果をお披露目します。


写真4:日本パビリオンでのサイドイベントの様子(写真提供:国立環境研究所環境計測研究センター Pang Shijuan氏)

 参加方法の2つ目は、展示ブースを設置することや、その訪問です。会場内には、政府、国際機関、NGO等によるたくさんの展示ブースが並んでいます。ブース設置を希望する各団体に与えられるスペースは狭いのですが、各団体が研究成果や事業等のアピールのために工夫をこらして展示しています。国立環境研究所は、COP10(2004年)以降、毎年、展示ブースを設置しています。今回は、地球環境戦略研究機関(IGES)と合同で設置しています。国立環境研究所は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)及び温室効果ガス観測技術衛星2号(GOSAT-2)の成果、温暖化リスクの管理戦略に関する研究成果、アジア太平洋統合評価モデル(AIM)による評価、各国の温室効果ガス排出削減の進捗を計測するための指標開発研究に関する成果など、国立環境研究所で行われている多岐にわたる温暖化研究を紹介しています。国立環境研究所がCOP21で提供している資料は、こちらで見ることができます。


写真5:IGES/NIESブースで来訪者に研究成果の説明をする藤野純一国立環境研究所主任研究員(写真提供:国立環境研究所環境計測研究センター Pang Shijuan氏)

 参加方法の3つ目として、交渉の傍聴があります。近年は、動画配信、交渉中のドキュメントの電子共有もかなり進んでおり、日本にいながら、遠くの国で開催されるCOPにバーチャル参加という方法もあります。ですが、すべての会議の動画が配信されるわけではないことや、COPの場に来ると様々な専門性を有する方と意見交換ができることにメリットを感じているので、私は、13年前から、毎年、COPに出席しています。また、交渉を傍聴するほか、交渉に自らの主張を反映させようと、ロビー活動をする人達もいます。


写真6:COP21正面玄関前で石炭を使わないように訴える環境保護団体

 このように、COPには、政府関係者として温暖化交渉に直接携わるだけではなく、様々な参加の道が用意されています。現地に来てCOPに参加するには、COPに認められた団体を通じて参加登録を行うことになりますし、COP15(コペンハーゲン(デンマーク)、2009年)では参加希望者が多すぎて、会議の運営がままならなくなったことから、その後、NGOに対し、参加者数の枠があらかじめ配分されるようになっています。したがって、バーチャル参加以外は、誰でも自由にCOPに参加できるとまでは言えませんが、参加への道は他の条約等の会議に比べると格段に広く開かれていると言えます。

 今回の会場について印象に残っていることは、次の3つです。

 1つ目は、各国政府が設置するパビリオンの数や規模が拡大していることです。各国パビリオンでは、研究機関等や事業の成果などを発表するサイドイベントが開催されています(写真7~9)。


写真7:インドパビリオン。滝のように落ちる水が絵や文字を描き出していて、写真や動画を撮っている人が多いです。


写真8:米国パビリオン。地球の模型がひときわ目を引きます。


写真9:ドイツパビリオン。オープンスペースにいつも人が集まっています。

 2つ目は、食が充実していることです。会場内には、フランス料理、イタリア料理、アジア料理をそれぞれ提供する食堂のほか、パン屋さん(写真10)、ガレット&クレープ屋さん、スープ屋さん、パン屋さん、ホットワイン&ラクレットチーズ屋さん、コーヒーショップなどがあり、様々な飲み物や食べ物が提供されています。


写真10:会場内にあるパン屋さんの厨房。1日1万個のパンを焼くそうです。

 温暖化対策について議論している人たちの食事ですから、会議参加者皆が食べられるとか、おいしいということだけではなく、環境への負荷をできるだけ低くするよう、配慮がなされています(写真11)。


写真11:会場内で提供される飲食物に関する環境配慮の内容が記されたポスター。季節の野菜や果物が提供されること、ビニール袋は渡さないこと、使われている魚は100%持続可能な方法で獲られたまたは養殖されたものであること、使い捨てのプラスチック容器はできるだけ使わずリユースカップ等を使うことなど。

 3つ目は、会場のインテリアのセンスがとても良いことです。たとえば、NGOの展示ブースのあるホールでは、ブースが1つのアイランドに4つあり、それがホール内に放射状に配置されています。展示ブースの間には、ソファやテーブルが置かれていて、ゆったりと過ごすことができます。その効果もあるのか、展示ブースへの来訪者は例年よりも多いそうです。


写真12:NGOの展示ブース間にあるソファ(写真提供:国立環境研究所環境計測研究センター Pang Shijuan氏)

 欧州の著名な交渉官が、“COPでの交渉は大変だが、旧友たちに会える場でもある”とTwitterに投稿しているのを見ました。気候変動COPは、20年にわたって毎年開催されているので、まさに大きな同窓会のような場でもあります。

 私は、主に、温暖化への適応策や資金支援に関する制度について、どのような経緯で合意が形成されているのか、2020年以降の国際枠組みでは、これらがどのように位置づけられるかを把握するために、毎年、COPに参加していますが、交渉経緯の把握にとどまらず、COPの場で多くの人と会っていろいろな話をすることが、研究の活力になっています。

文・写真(写真2、4、5、12を除く):久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)

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