エコ・フレンドリーな会場設営
公式リーフレットによれば、約4万人が参加するCOP21は、フランスで開催されるこれまで最大の国際的な会合です。
国立環境研の久保田さんのレポートにもあるとおり、今回は会場の設営が見事です。リサイクルを前提として動線をよく考慮した、明解でセンスのいい会場構成になっています(写真1)。ブルー・ゾーンの大通りは「シャンゼリゼ」、向こうには模型のエッフェル塔もあります(写真2・3)。夜は点灯します(写真4)。フランス的なエスプリが効いています。メインの会議ホールは、「セーヌ」と「ロワール」(ロワール宮殿にちなむ)と名付けられています。
(写真1)明解な会場構成
(写真2)会場内のシャンゼリゼ
(写真3)模型のエッフェル塔前で、1.5度以下の目標を求める人たち
(写真4)夜の模型のエッフェル塔
さすがパリ、会場内のフードコーナーの食べ物も結構おいしいです。
久保田さんのレポート(11月30日付け写真6)にもありますが、今回は、ペットボトルを使わないように登録参加者にはおしゃれな水筒が配られています。フタの部分が取手兼コップになっています(写真5)。会場全体で45あるという給水コーナーが充実しています(写真6)。水に関する各国のことわざが紹介されています。コングレスバッグもセーターのリサイクル品です(写真7)。
トイレなども女性用は暖色系、男性用は寒色系に表示するようなことは意識的に避けられており、ジェンダー・ニュートラルな運営にも気が配られています。
(写真5)人気のマイボトル(フタが取手とコップを兼ねている)
(写真6)オシャレな給水器・「井戸が涸れてはじめて水の価値を知る」など各国のことわざが記されている
(写真7)セーターをリサイクルしたコングレス・バッグ
各国パビリオンは社会の鏡
ブルー・ゾーンの売り物の1つは、主要国のPavilionです。
Japan Pavilion でも連日いろいろな催しが行われています。館長は私たちにもおなじみの西岡秀三先生(国立環境研究所特別客員研究員)です。予算面等、いろいろな制約の中で、西岡先生はじめ関係者のご努力に敬意を表したいと思います。西岡先生によれば、前回リオのときの3倍の広さだそうです。
Japan Pavilionは、彩度を落とした洗練されたシックな色使いです(写真8)。ただし残念なのは、外からのお客さんを引き込もうという発想が弱く、やや閉鎖的な構成になっている点です。中で何をやっているのか、外から見えにくい構造になっています。
(写真8)Japan Pavilion
お向かいはインドネシアのPavilion。なかなかがんばっています(写真9)。
(写真9)インドネシア・パビリオン
続いて韓国の Pavilion(写真10) 。Climate-Smart Korea というコンセプトを明解に打ち出しています。日本のPavilion には、Climate-Smart Koreaのようなシンプルで力強いメッセージがありません。日本のPavilionとほぼ同じ面積ですが、中の座席数は日本の約半分にして、外へのアピールを重視しています。場所代は面積に応じた費用負担だそうですが、ディスプレイにどれだけ予算をかけたのか、インドネシアや韓国は力が入っています。
(写真10)Climate-Smart KOREAのパビリオン
韓国はモニターも外に2つ出し、誰でも見ることができ、朴大統領のメッセージを含む動画をいつも流しています。日本のモニターは1つで、現在進行中のプログラムを表示するか、他の時間帯は止めているか、富士山と桜などをアピールしています。韓国のPavilionは日程を大きく表示して、コンタクト・パーソンのメイル・アドレスも大きく明示しています(写真11)。日本のPavilionの日程表示は小さく、コンタクト・パーソンの表示がありません。急ごしらえだったのか、椅子の上に置いてあります。
(写真11)韓国パビリオンのスケジュール表(壁いっぱいに掲げられている)
日本のPavilionは洗練された美しいものですが、日本社会の内向きぶりをシンボライズしているかのようです。
8日午後は、パリ在住の日本女性の協力で茶道のサービスがありました(写真12)。関係者の必死の努力を感じましたが、気候変動会議で伝統的な日本文化をアピールすることにどれだけの意義があるのか、私は、根本的な疑問を感じました。
(写真12)和服でお茶のおもてなし
今回一番話題のPavilionはインドです。刻々と、COP21、Parisなどの文字を描きながら循環する水の仕掛けが見事です(写真13)。照明の色は、開催国フランスに敬意を表して、三色旗にも対応しています。
(写真13)人気を集めるインドのパビリオン
ドイツは面積もたっぷりとって、椅子を外側に出し、開放的なつくりにして、お客さんを呼び込んでいます(写真14)。
(写真14)ドイツのパビリオン
アメリカのPavilionは科学的な知見の提供をメインにしていますが、いつも人気を集めています(写真15)。
(写真15)いつも人気のアメリカ・パビリオン
アメリカの隣は偶然ですが中国で、こちらも人気を集めています。
各国のPavilionは、国ごとの発想の違いや国情、力の入れ方、予算のかけ方などを反映して、それぞれの社会のあり方、現在の社会の活力を期せずして映し出す鏡となっています。
文・写真:長谷川公一(全国地球温暖化防止活動推進センター長、地球温暖化防止全国ネット理事長)