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12月5日 COP21に「おいでやす」

京ことばでお出迎え

 ドイツのオルデンブルグ大学での別件の会議をすませ、12月4日にドイツのブレーメンからパリへ入りました。空港でまず目についたのは、COP21の歓迎の電子ボードです(写真1)。10ヶ国の言葉で記されています。日本語を見ると、「ようこそ」ではなくて、わざわざ京ことばの「おいでやす」になっています。COP21のフランス側の広報担当者が、「京都議定書」に敬意を表したものと思われます。


(写真1)COP21に「おいでやす」

環境自治体の「エコ・モビリティ」の取り組み

 5日(土)、まず会場へ。今回、私は、「日本環境会議」というオブザーバーNGOの一員として、7日(月)から有効の登録をしています(今回は週単位の登録です)。5日は会議センターには入場できず、サイド・イベントを見学しました。その中から、ICLEI-Local Governments for Sustainabilityのイベントを紹介しましょう。

 ICLEIはInternational Council for Local Environmental Initiatives(国際環境自治体協議会)の略称ですが、2003年から、ICLEI-Local Governments for Sustainabilityと表記するようになりました。国連の気候変動枠組条約締約国会議(COP)は基本的には国家間交渉の場です。合意の主体は国家(中央政府)です。しかし、現実の温室効果ガス削減にとって、地方自治体やNGOなどの市民社会・企業の役割が重要なことは言うまでもありません。

 ICLEIは、例年COPで充実したサイド・イベントを提供していますが、今年も、「求むローカルヒーロー」とか「求む創造性」というアピールをしています(写真2)。 私が見た「市長がコミットするエコ・モビリティ」というタイトルの、自動車の削減や公共交通の利用促進などによって交通部門からの排出削減に取り組む事例報告のセッションは、なかなか興味深いものでした。今年の10月に、南アフリカのヨハネスブルクで、世界エコ・モビリティ・フェスティバルを1ヶ月間にわたって開催したそうです。次回は2017年9月に台湾の高雄市で開催されます。


(写真2)「求むローカル・ヒーロー」

 ほかに、ノルウェーのオスロ、オーストラリアのシドニー、アメリカのニューヨーク、イタリアのミラノ、南米コロンビアのボゴタの報告がありましたが、とくに興味を引いたのがニューヨーク市の報告でした。最も聴衆の反応を集めていました。

2050年80%削減をめざすニューヨーク市

 ニューヨーク市というと車社会のイメージが強いですが、ブルームバーグ前市長(2002〜2013年)のリーダーシップのも とで、自動車の削減・乗り入れ制限に力を入れています(写真3)。交通混雑の緩和や温室効果ガスの削減だけでなく、交通事故による歩行者の死傷者の減少などの効果があります。1984年と比べて、この30年間に歩行者の死は半分以下に減っています(写真4)。歩行者の死亡事故ゼロを掲げたキャンペーンに力を入れています。


(写真3)マンハッタン・Before and After


(写真4)ニューヨーク市から交通事故死者をゼロに

地球温暖化対策では、ニューヨーク市は、2005年時点で5,911万トンのCO2を2050年には80%減の、1,182万トンまで減らすことを目標にしています。交通部門では、700万トン減らすことをめざしています(写真5)。


(写真5)ニューヨーク市で80%削減(2005年比・2050年目標)

 温室効果ガス削減への消極姿勢のみが報じられがちなアメリカですが、消極的なのは共和党が多数派を占める連邦議会であり、かなりの地方自治体が独自に積極的な目標を掲げています。今回の6都市の事例でも、2050年までの長期目標と削減の中身を項目別に示したのはニューヨーク市のみでしたが、いずれの事例もハード整備ではなく、ソフト面、市民をいかに巻き込むかを重視した取り組みでした。とくに内容に目新しいものはありませんでしたが、市長のイニシアティブで、「エコ・モビリティ」というビジョンを掲げて目標達成をめざすことが重要だというメッセージばかりでした。

ソウル市の取り組み

 ICLEI が発足したのは1990年。1000以上の地方自治体が加盟しています。現在の代表は朴元淳(PARK Won Soon)ソウル市長です(写真6)。気候変動世界市長会議の会長でもあります。ソウル市は、2020年までに温室効果ガスの1000万トン削減を掲げています。人口約1000万人、1人1トン削減運動を展開しています。エネルギーの効率利用から防災まで、多彩な取り組みを紹介する21頁に及ぶ魅力的なリーフレット「ソウルの約束」を配っていました。


(写真6)朴元淳ソウル市長

京都市のブース

 日本からは京都市がブースを出していました(写真7)。12月4日に、2020年度までに90年度比25%削減をめざす取り組みを報告したそうです。


(写真7)京都市のブース

参考
http://www.cities-and-regions.org/
http://tap-potential.org/about-tap/
(興味のある方は、ツイッターで、#TAP2015で検索してください)

文・写真:長谷川公一(全国地球温暖化防止活動推進センター長、地球温暖化防止全国ネット理事長)

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