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COP19では何について話し合われるのか?(11月12日)

ワルシャワに来たのは初めてです。こちらに来てから、ほぼホテルと会議場の往復だけで、会議以外、ほとんど何も見ていませんが、街並が美しいことと、公共交通機関が発達していて便利なことが印象に残っています。私は、トラムで、会議場に通っています。

写真1:COP19会場とトラム

 

さて、今日は、COP19で何について話し合われるのかをお伝えしたいと思います。これを理解するには、気候変動交渉のこれまでの流れを理解する必要があります。

気候変動COPでは、条約に参加する国が集まって、これまでに合意してきた国際レベルの気候変動対策が適切に実施されているかどうかをチェックし、そして、今後どのように対策を進めていくかを話し合っています。

 現在、議論されていることのうち、最も大きな注目を集めているのが、2020年以降、国際社会がどのように気候変動対策に取り組んでいくか、です。一昨年、ダーバン(南アフリカ)で開催されたCOP17で、この新しい枠組みについて、2015年末までに決めることになりました。なお、来年のCOP20はリマ(ペルー)で、新しい枠組みについて合意することになっている2015年のCOP21はパリ(フランス)で開かれることになっています。

 

図:気候変動交渉の流れ(出典:筆者作成)

 

このダーバンでの合意は、国際レベルの気候変動対策にとって、大きな転換点のひとつとなる可能性があります。それは、気候変動交渉の大きな課題のひとつである、「先進国」と「途上国」という硬直化した役割分担を乗り越える可能性を持つ合意だからです。

  現在の国際社会の気候変動対策の基盤である、気候変動枠組条約(1992年採択、1994年発効)では、先進国(当時のOECD加盟国)及び経済移行国のリストを条約附属書Ⅰに掲げて、「附属書Ⅰ国」としています。条約上、これらの国々は、自国の排出削減を行うことが求められています。京都議定書(1997年採択、2005年発効)でも、「排出削減数値目標を持つ先進国」と「目標を持たない途上国」という区分がなされています。バリ行動計画(2007年)では、非附属書Ⅰ国(条約附属書Ⅰ国ではない国、すなわち、途上国を意味します)は、自らの排出削減行動に関する交渉を始めることに初めて合意しました。

  気候変動枠組条約が採択されてから、20年以上の月日が流れていますが、この条約附属書Ⅰの先進国のリストは当時のままです。条約採択後、経済開発協力機構(OECD)に加盟した、メキシコ(1994年加盟)、韓国(1996年加盟)、チリ(2010年加盟)は、このリストには含まれていません。また、急速に経済成長を遂げ、温室効果ガスの排出量シェアの上位を占めるようになっている中国やインドも、このリストには含まれていません。

  気候変動枠組条約は、気候変動が危険なレベルに達さないようにすることを目指しています。そのためには、地球全体で温室効果ガスを大幅に削減することが必要です。先に述べたような、附属書Ⅰ国と非附属書Ⅰ国との役割分担を固定化した仕組みでは、地球全体での温室効果ガスの削減を進めていくことができません。

  2020年以降の国際枠組みは、「すべての国が参加する」ものにすることになっています。もちろん、最終的に、これまでの「附属書Ⅰ国」と「非附属書Ⅰ国」との役割分担が維持される可能性もあります。しかし、今後の交渉で変えていく余地が生まれたのです。

  今日は、2020年以降の国際枠組みについて議論する、強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(Ad Hoc Working Group on the Durban Platform for Enhanced Action: ADP)の開会会合が開催され、各交渉グループ代表がワルシャワ会合の成果として何を期待するかについて発言しました。

写真2:議事を進めるルンゲ=メッツガーADP共同議長(EU)

 

経緯と各交渉グループの発言を踏まえると、ワルシャワ会合では、以下の4点が主な論点になりそうです。

 

1)  2015年末(=2020年以降の国際枠組みに合意する)までに、いつ何を議論するかを決めること

2)  2020年までの各国の排出削減目標の引き上げについて検討すること

3)  先進国から途上国への資金支援(短期(2013年~2015年)と長期(2020年まで)の両方)の見通しを明らかにすること

4) 特に脆弱な途上国における気候変動の影響に伴う損失と損害に対処する制度的取り決めを確立すること

 

 明日以降、これらはどういう問題なのか、なぜ論点となっているのかについて、お伝えしていきたいと思います。

 

文・写真:久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)

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