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COP19、始まる (11月11日)

11月11日(月)、ワルシャワ(ポーランド)のワルシャワ国立競技場において、気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)、京都議定書第9回締約国会合(CMP9)が始まりました。この日は、ポーランドの民族独立記念日でした。気候変動COPは、1年に1度開催され、開催地は国連5地域が順番に担当することになっています。今年は東ヨーロッパの番です。

  「サッカースタジアムでCOP?」と、最初に聞いた時は驚きました。現地に行ってみると、屋根で覆われたグラウンドに仮設の会議場が建てられています。ずっと座っているとだんだん寒くなってきます。

写真1:ワルシャワ国立競技場内の様子。右手奥に見える仮設の建物が全体会合会場です。

午前中、COP19の開会総会が開催されました。同会合において、ポーランドのマルチン・コロレツ環境大臣がCOP19とCMP9の議長に選任され、アティーヤCOP18議長からコロレツCOP19議長へと、木槌の引き継ぎが行われました。

写真2:決議採択の時などに議長が使う木槌の引き継ぎ

コロレツCOP19/CMP8議長は、議長就任スピーチにおいて、「気候変動は地球規模の問題であると同時に、地球にとってのチャンスでもある。1か国だけでは、あるいは、数か国のグループであっても、気候変動問題を解決することはできないが、国際社会全体で協力すれば成し遂げることができる。“私達は、それぞれ違う状況にある”という人もいるかも知れない。その通りだが、それを私達の強みに変えよう。すべての人に対して、まったく同じレベルで、明日を良くする努力をするように求める人は誰もいない。しかし、それぞれの国が何かを持ち寄ることはできる。すべての国がそれぞれの強みを持ち、地球を癒す薬の素となる何かを提供することができるはずだ」と述べ、2020年以降の気候変動問題対処のための国際枠組みに関する合意に向けて、COP19で交渉を進展させるよう、各国に協力を求めました。

 クリスティーナ・フィゲレス気候変動枠組条約事務局長は、「多くのはっとするようなできごとがある」とし、今年5月に、ハワイのマウナロア観測所で、観測開始以降初めて、CO2濃度が400ppmを超えたことと、先日、フィリピンに甚大な被害をもたらした台風30号(ハイアン)について触れました。また、フィゲレス事務局長は、「環境保全だけではなく、安全保障、エネルギー、経済、ガバナンスなどの理由から、気候変動対策の高まりがみられる。今、政治的意思と市民は、気候変動対策を支持している。2020年以降の国際枠組みは、私達の手の届くところにある。各機関、開発銀行、投資家の準備はできている。科学からのメッセージは明確である。国際社会は、2015年の成功に向けて、変革を導き、協力することができる」と述べました。さらに、フィゲレス事務局長は、会場がサッカースタジアムであることにちなみ、「この会場は、オリンピックのモットーである、“より速く(Citius)、より高く(Altius)、より強く(Fortius)”を実現するのに最も適した場である。私達が求めている、社会的に衡平で、経済的に持続可能な未来に向かって、COP19をより速く、より高く、より強く進めていこう。」と各国に呼びかけました。

写真3:開会スピーチを行うフィゲレス気候変動枠組条約事務局長

ラジェンドラ・パチャウリ気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長は、今年9月に公表されたIPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書をはじめとする、気候変動に関する最新の科学的知見を紹介しました。パチャウリIPCC議長は、気候変動は明白であること、大気中のCO2、メタン、N2Oの濃度は、少なくとも過去80万年間経験したことのないレベルに到達していること、排出削減の遅れは、温室効果ガスの低い安定化レベルの達成を著しく困難にし、より深刻な気候変動影響のリスクを高めることにつながるとしました。

写真4:IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書等の主な知見を紹介するパチャウリIPCC議長

 その後、各交渉グループが今回の会議にどのような成果を期待しているかについての発言がありました。この中で、最も注目を集めたのは、フィリピン代表サニョ氏の発言です。サニョ氏は、台風30号による被害の状況を涙ながらにうったえました。また、世界が、最も野心的に排出削減を行ったとしても十分ではないという時代に入ってしまったとし、緑の気候基金への拠出、損失と被害に関する国際メカニズムの設置、排出削減のさらなる推進などが今回のCOPの成果として得られるまで、ハンガーストライキを行うと述べました。さらに、「私達は、この異常気象が頻発する世界を変えることができる。この会議がそのための場となるよう各国にお願いしたい」と強く訴えかけました。この後、中国代表の提案により、台風30号の犠牲者に対し、3分間の黙祷が捧げられました。

写真5:発言を終え、涙を拭うサニョ氏と、立ち上がって賞賛を送る会議出席者

今日から2週間、ここワルシャワでは、今後、国際社会が温暖化問題にどのように取り組んでいくかについての議論が行われます。会場の雰囲気はどのようなものなのか、交渉はどれくらい進んでいるのか、なぜある論点が問題となっているのかなどを、現地から皆さんにお伝えしていきたいと思います。

写真6:COP19のロゴ付りんご。ポーランド環境省が参加者に配っていました。

 文・写真:久保田 泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)

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