この日から各国の閣僚によるステートメント(提案等)がはじまりました。
そのいくつかを会場で聞いたのですが、
カナダのとき、会場内でちょっとしたざわめきがありました。
環境大臣の演説中、オブザーバー席にいた、
おそろいのTシャツを着た若者6人が、
演説者側に背を向け、無言のまま立ったのです。
気候変動問題の解決に後ろ向きで
京都議定書からの離脱を決めた“汚い”カナダに対する
無言のメッセージを伝えたかったようです。
その後、彼らは警備員に会場外に連行されましたが、
彼ら若者に対し会場内から大きな拍手が湧きあがりました。
一方、温暖化の影響に脆弱な環境にある島嶼国の一つ、
ツバルの大臣は、Not tomorrow, Not time to waitと切々と訴え、
会場から大きな拍手が送られていました。
昼近くには、日本の細野環境大臣による演説がありました。
東日本大震災からの復興に関する話に始まり、
世界全体の排出量の1/4しかカバーしない一部の国のみが
排出削減義務を負う現行の京都議定書の単純延長は、
公正・公平ではなく、かつ、真に地球温暖化問題に対する解決とはならないので、
日本はこれに加わらないことを明言し、
その上で、すべての国が削減義務を負う
新しい枠組みづくりの必要性について述べました。
私は、細野大臣の演説の内容そのものは
極めて真っ当であると感じたのですが、
日本を含む世界のNGOのメンバーには不評のようです。
それは、難しい交渉の上、やっと作られた京都議定書の
“法的裏付けのある”先進国の排出削減義務を、
今、ここで、切ってしまうと全ては瓦解してしまうのではないか、
それよりも、まずは、京都議定書を延長させ、
その上で、中国やアメリカなどを新たに法的削減義務のある国として
引きずり込むべきではないかという考えのようです。
京都議定書に代わる新たな枠組みといっても、
具体性に乏しく、加えて、日本がそれにどこまで積極的にコミットメントしてゆくかが
疑わしいということもあるようです。
それも、また、極めて説得力のある意見です。
ともあれ、会場内には、I Love(ハートのマーク)KPの
ロゴの入ったTシャツを着た人の数が日に日に増えてきているようです。
会場内でこのTシャツを販売しているのは、
tcktcktckという環境に関するキャンペーン団体のブースですが、
たくさんの人がそのブースに群がり、午後には完売となっていました。
昼には、I Love KPのTシャツを着た20名余りの若者が集まり、
KP(京都議定書)を大事にしようと訴えていました。
彼らは、さまざまな国からFacebook等を通じて知り合い集まったもののようですが、
Tシャツを買い求めたばかりの飛び入りの参加者もいたようでした。
さて、この日は夕方までよく晴れ、群青の空に満月に近い月が出ていました。
前日のことですが、夕方、丘の上のバス停を降り、
土の赤が特徴的な坂道をゆっくりと下っていたら、
向こう側から、土の色に同化したような濃赤を交えた
カラフルな服を着た親子にすれ違いました。
ハロー、バーイと手を振ってくれて、とてもフレンドリーな親子でした。
眼下に広がる、なだらかな丘陵の上に月が見え、
その反対方向には深い青色の空に薄く夕焼け雲が残っていました。
深く鮮やかな色とフレンドリーな人々、それが南アフリカの印象です。
執筆:佐藤 剛
(宮城県地球温暖化防止活動推進センター ストップ温暖化センターみやぎ運営委員)