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vol.21 EU、COP6パート2での合意の重要性を再確認

アメリカの動きを受け、4月2日よりアメリカ、ロシア、イラン(途上国グループG77の議長国)、中国、日本を訪問したEU代表団は、全ての行程を終え、4月10日午後、日本記者クラブで記者会見を開きました。
EU議長国スウェーデンのラーセン環境大臣(写真右)は会見で、「訪米以降の旅は成功であった。全ての国が地球温暖化問題を重要な問題と認識し、その対 策には世界的な協力が必要であり、京都議定書発効に向け、ボンで結論を出すため、継続して交渉を行う気持ちでいることを確認し、4月21日にニューヨーク で開催される持続可能な開発委員会(CSD)の会議での再会を約束した。」と話しました。また、EUはその会合で、新しいCOP6議長ノートをもとに交渉する準備があることを明らかにしました。
さらに大臣は「9年前我々は大きな竜巻が来るという予測を知り、家を建てそこに避難することを決めた。みんなで協力をして家の図面を書き、やっとの思い で家を建てたのが京都だった。その後、内装やインテリアなどについてみんなで協議をしながら決め、完成まで後少しというところまでがんばってきた。ハーグ ではもう少しで完成するところだった。現在私たちは、竜巻は水平線に見えてきており、すぐにその家を完成させなければ間に合わない状態にある。今は、別の 家を建てることを考えたり、完成しつつある家を取り壊すというタイミングではないのだ。」と延べ、7月にドイツのボンで開催されるCOP6パート2で合意をし、世界が共通してアクションをとれるように枠組みをつくることの重要性を訴えました。
質疑に答えるEU代表団(写真左からEU代表団ヨス・デレベケ氏、EU議長国スウェーデン環境相カイ・ラーション、ベルギーエネルギーと持続可能な開発相オリバー・デリーズ氏)。詳細は以下のとおりです。
Q.チェイニー米副大統領が京都議定書を死文化したと発言したことについてどう思うか。
A.前にも言ったが、1カ国が国際的な合意を死んだと宣言することはできない。京都議定書はまだ生きており、我々はまだ激しい交渉の中にいると考えている。
Q.日本に対する満足度は?
A.日本のポジションは他の国と少し違う。アメリカを交渉に戻す希望を今でももっているようだ。アンブレラグループのメンバーなので、我々より判断力があるのかもしれない。しかし、アメリカの批准に関して、EUも扉は閉めてはいない。日本の野党の代表はアメリカ抜きの批准を強く望んでいるようだった。
Q.アメリカなしで議定書を発効することは科学的に見てどういう意味があるか。
A.この際、科学的な観点は問題ではない。温暖化対策を実際に行っていくというアクションのコーディネートが必要なのだ。そのためにも2002年に議定書を発効させることが重要なのだ。
Q.今回のアメリカを交渉に参加させるために排出量取引を無制限に使用できるようにするとか、吸収源をかなりの量認めるなどCOP6パート2で決めるルールを緩めることを考えているのか。
A.米国を議定書に参加させるための譲歩は避けたい。柔軟に考える用意はあるが、将来の地球環境保全という制約がある。温室効果ガスの実質的な削減が先進国で実施されなければならず、ひざまずいてまで米国に戻ってほしいと言うつもりはない。
Q.アメリカ抜きで批准するということの根拠は何か。各国から確約が取れているのか。
A.まだそこまでは進んでいない。G77内部での協議はまだないが、関心は抱いているようだ。また、ロシアからはアメリカ抜きでも交渉に留まる気持ちがあることを聞いている。
Q.アメリカがCOP6パート2に参加するということだが、参加する意味は何なのか。交渉を遅らせるつもりなのか。
A.意味は分からないが、COPは締約国会議であり、締約国であるアメリカが参加することは可能だ。アメリカが条約を批准したのはブッシュ大統領の父親ということもある。とにかく参加するということは良いニュースだ。アメリカが船にのるのが我々の目的で、アメリカを取り残すのが目的ではない。
Q.アメリカ抜きで発効するというメッセージを発表するタイミングが早かったのではないか。アメリカの参加がないと途上国も参加しないのではないか。
A.アメリカが京都議定書の問題点として途上国に削減目標がないことを上げているが、1950年以降二酸化炭素排出量の80%は先進国によるものである。先進国がまず削減し、途上国の削減目標については次の約束期間にむけて議論すべきだ。
EU代表団の記者発表資料(英文)

ピックアップ ‐EUとは? 欧州連合(EU)、欧州共同体(EC)、欧州委員会のちがい-

欧州連合(EU)の基礎となったのは1952年に設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、1958年に設立された欧州経済共同体(EEC)および欧 州原子力共同体(Euratom=ユーラトム)の3つの共同体です。1967年に3つの共同体の行政執行機関と意思決定機関がそれぞれ統合されて欧州共同 体(the European Communities = EC)が生まれました。統合により生まれたECの単一行政執行機関がEC委員会(the Commission of the European Communities)です。 1993年11月にマーストリヒト条約(欧州連合条約)が発効したことによって、ECの役割および権限の及ぶ領域以外に 新たな2領域(共通安全保障政策および司法・内務協力)を加えた機構、すなわち欧州連合(EU)が誕生しました。EUという呼称はそれまでECと呼ばれて いた地域や主体を指す代わりに用いることができます(例:EUの人口、日・EU間の協力)。  
前述のEC委員会は、マーストリヒト条約以降、欧州委員会(the European Commission)と呼ばれるようになり、EUにおける唯一の行政執行機関としての役割を果たしています。
駐日欧州委員会代表部ホームページより)  
今回訪日したEUの代表団は、EUの議長国、EUの次期議長国、欧州委員会の代表によるもので、EUトロイカと呼ばれています。 EUの議長国は、1月から6月、7月から12月という半年の任期で、加盟国の間で順番に交代します。現在の議長国は6月までスウェーデンで、7月からは、 ベルギーとなります。

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