カリキュラム概要
都道府県名 | 富山県 |
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設置区分 | 公立 |
学校名 | 富山県立富山北部高等学校 |
学校概要 | 本校は普通科、普通科体育コース、くすり・バイオ科、情報デザイン科の4つの学科・コースからなる総合制高校である。それぞれの学科・コースでは専門性を活かした授業が盛んに行われている。2020年に富山北部高校と水橋高校が合併し、新高校は5年目となる。旧富山北部高校も合わせると、創立109年となる歴史が深い高校でもある。 |
これまでの取り組み | 今回の報告では、普通科の「総合的な探究の時間」の授業の一環で行ったグループの取り組みを紹介する。本校では、2年前より総合コーディネーターを設置し、1~2(3)学年の年間スケジュールや取り組み等を統一することで、探究活動に不慣れな教員でも対応できるように学校の制度を整えてきた。以下が、各学年の目標である。 ・1年:<体験>フィールドワーク行き、外部機関との関わりを持つ。 ・2年:<発信>外部機関との連携し、自分たちの活動してきた内容を外部の人に伝える。 ・3年:<自己への還元>1、2年生で行ってきた探究活動の内容を進路に生かしながら、進路探究(学びたい学問に関する新書を読む、志望理由書の作成や小論文練習)を行う。 生徒自身が課題を設定し、解決するための活動は2年次に行っている。1年次はその準備段階の位置づけである。「富山市×〇〇」を共通のテーマとし、各グループごとに地域の課題を設定し、活動している。 |
学年 | 2学年 |
テーマ | 流域治水 |
目標 | 【グループの目標】イベントへの参加、ジオラマ制作等を通して、世の中であまり広く知られていない流域治水についての学びを深め、協働性を育成する。また、流域治水について他者に説明することにより、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を育成する。 |
内容 | 近年の気候変動により、自然災害が多発している。河川や山間部が多い富山県では、大雨の影響で洪水や土砂災害の被害を受けることが多い。そのため、流域治水に関する知識を深めるとともに、流域治水について多くの人に知ってもらうための活動を行った。富山県庁が行っている出前講座に参加して、地球温暖化や防災に関することを学んだ後、流域治水に関する認知度を調査するとともに、認知度を高める活動として、富山駅構内の南北通路で行われたイベントに参加した。さらに、より多くの人に知ってもらうために流域治水に関するジオラマを制作し、「とやま探究フォーラム」で発表した。 |
大切にしたこと | 2学年の目標は、<発信>であるため、できるだけ多くの人に伝えられる機会をつくり、外部機関と連携を取りながら活動を行った。他者に伝えるために必要なことは、自分自身が理解していることや分かりやすく説明することであると考えている。そのため、まずは知識を深めるために、外部講師に講義を依頼した。また、流域治水については全国でも認知度が低いため、知らない人にもできるだけ身近に感じてもらえるように流域治水のジオラマを制作した。ジオラマを使いながら説明することで、初めて聞いた人でも理解が深まるような工夫をおこなった。 |
スケジュール | 令和6年4月~令和7年2月 |
外部協力者 | 富山県立大学工学部環境・社会基盤工学科 講師 吉見和宏 氏 富山県庁 流域ぷらっとフォーム 株式会社たがやす |
フォトギャラリー






取り組み
令和6年4月~令和7年2月
1学期
1 テーマ設定
・2,3年生合同HRを行い、昨年度「富山市×流域治水」のテーマで活動していた先輩たちの発表を聞き、テーマを引き継ぐこととした。
・昨年度は、流域治水に関するフォーラムへ参加し、地域住民とワークショップを行ったり、発表を行ったりした。調査の結果、流域治水についての認知度が低いことが問題であることが分かったが、認知度を上げるための活動を行うことができなかった。そのため、今年度は、流域治水に関する認知度を上げるためにジオラマを制作することにした。
2 文献調査
・先輩たちが調べた文献と発表資料を引き継ぎ、調べた。
・国土交通省が掲載している流域治水に関する資料で、流域治水の考え方や対策を調べた。
3 【調査Ⅰ】出前県庁への参加
・富山県庁の環境生活課や危機管理課など、地球温暖化対策や防災を行っている部署の方から講義を受け、なぜ流域治水についての学びを深める必要があるのかを再確認した。
4 【中間報告Ⅰ】
・テーマ設定から出前県庁への参加までの活動で学んだことなどをスライドにまとめ、発表した。
5 【調査Ⅱ】シンポジウムへの参加
・流域治水の認知度や流域治水について考えてもらうために、流域プラットフォーム主催の「くらしといのちをつなぐシンポジウム」に参加した。富山駅南北通路で行われたイベントのため、流域治水に興味がある人だけではなく、たまたま通りかかった人などにもアンケートを行うことができた。また、流域治水の認知度を上げるためにポスターセッションを行った。
2学期
6 【中間報告Ⅱ】
・【調査Ⅱ】で行ったアンケート調査の回答から、やはり流域治水の認知度が低いことが分かった。また、流域治水に関する取り組みや研究をしている機関はあるが、あまり知られていないことも分かった。そのため、より多くの方に知ってもらう機会を作ることが大切だと分かった。
7 【調査Ⅲ】ジオラマの制作①
・流域治水に関する政策は、30以上あることが分かり、文章ではイメージしづらいことが分かった。そこで、誰でもイメージしやすいジオラマを制作し、ジオラマを使いながら流域治水に関する政策を説明することとした。
・ジオラマを制作するにあたって、高校生の知識や技術では難しいことが多かったため、富山県立大学の吉見氏に協力していただき、制作を行った。10月~12月の放課後13回程度、富山県立大学に行き、制作を行った。
8 【中間報告Ⅲ】
・【調査Ⅲ】で行っているジオラマ制作についての報告を行った。
3学期
9 【調査Ⅲ】ジオラマ制作②
・2学期までにジオラマを完成させることができなかったため、1月の放課後にジオラマ制作の続きを行った。完成後は、外部での発表に向けて、準備を行った。
10 フォーラムへの参加
・富山大学・富山県教育委員会主催の「とやま探究フォーラム」へ参加した。富山県内の高校が日頃の探究活動や研究内容を発表する場であり、本校は、ポスターセッションで発表を行った。流域治水について知っている人はほとんどいなかったため、ジオラマを使って説明することで多くの人に知ってもらう機会となった。
11 校内発表会への参加①
・2学年で行われた発表会で発表を行った。
12 校内発表会への参加②
・本校の各学科の代表チームが発表を行う、「3学科合同研究・探究発表会」で発表を行った。先輩のような探究活動を行いたいと後輩たちのやる気に火をつけることができた。
13 個人論文に作成
・1年間の取り組みについての論文を作成した。グループで行うのではなく、個人で3000字以上の論文を作成した。
児童の変化
<児童・生徒の変化について>
探究活動を行う意義について、初めは分からずあまり積極的に取り組んでいない生徒が多かったが、シンポジウムへの参加やジオラマ制作を通して、流域治水という考え方に興味を持ち、積極的に行動する生徒が増えた。特に、ジオラマ制作を行ったことが効果的であった。始めたころはどのように作るのか分からず、吉見氏や吉見氏の研究室の学生の指示を受けてから行動していた。しかし、回数を重ねるごとに、こうしたらよいのではないか、どうしたら相手に伝わりやすいかを考えながら主体的に制作している姿が見られた。1月の放課後は生徒たちが自ら制作を続け、発表前に完成することができた。そして、校内外での発表を通して、自信をつけた生徒が多かった。また、1年間の学びを通して、より流域治水について学びを深めたいと考え、富山県立大学に進学したいという気持ちを固めた生徒もいた。
<児童・生徒の変化をどのようにして評価したのか>(アンケート等)
日頃の授業や放課後の取り組みを観察して、生徒の変化を評価した。