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自由の森学園中学校・高等学校

目次

カリキュラム概要

都道府県名埼玉県
設置区分私立
学校名自由の森学園中学校・高等学校
学校概要競争や点数に依存しない、対話と思考、表現を重視した授業づくりを軸とした教育実践を創出するため開校した。1985年開校。独自の教科カリキュラムと授業、芸術・表現の教育の重視、生徒主体の学校行事、高校における100講座の選択授業などが特徴である。前後期に手渡される「学習の記録」は各教科全て文章による記述で作成される。生徒数約中学280名高校620名。その内160名ほどが寮生である。
これまでの取り組み開校以来実践してきた環境教育実践を体系化して、2017年にユネスコスクールに加盟。中学校では各学年で取り組む「森の時間」を軸にした総合学習として、高校では選択講座のなかにESD講座を設定している。また、毎年行われるアースデイ東京に参加したり、廃食油を回収して公用車を走らせたり行事用に発電したりする生徒の活動(天ぷら油プロジェクト)などが有志で行われている。並行して、学園経営においては可能な限り脱炭素と地域との連携に取り組んでいる。
学年全学年
テーマ脱炭素、自然エネルギー、森林環境、生態系、農林業、持続可能な地域づくり
目標地球環境の問題と地域や学園の課題,そして自分自身をつながりとして認識し、自らの行動によって解決していく体験をすること。
内容自由の森学園のESDの構造は大きく教育実践と学園経営の二本立てになっている。前者の教育実践面は、中学「森の時間」や高校選択授業などを軸に展開されるものであるが、それ以外に生徒の自主的な活動(天ぷら油プロジェクトなど)も含まれる。
大切にしたこと1,日本と世界で起きていることは、他人事ではなく自分たちにつながっている問題だという認識をつくること。このことは、気候変動問題だけではなく、平和や貧困などの世界的な課題全てに共通する要素である。時間や空間が隔たった人々への想像力、共感が必要であり、ここを耕すことと正しい知識は両輪である。2,また、誰かがやるのではなく自分(たち)が行動するという姿勢の形成。3,可能な限り現場におもむき、目で見、話を聞き体験的に学習すること。4,生徒たちに対する教育実践とともに、学園が具体的に脱炭素に取り組むことが、気候変動教育を実のあるものとしていく重要な鍵である。地球環境の未来を子どもたちに託すのではなく、今真剣に大人(学園)が取り組むことが、タテマエとしての環境教育を脱し、未来を構築するパワーとなると考える。多大な投資をしなくても経営的なバランスを保ちつつ脱炭素に舵を切れるという経営実践は、国際的な脱炭素目標が実現可能であることを実証してしている。教育機関の脱炭素経営は、単なる経営方針ではなく教育実践でもあると考える。 
外部協力者飯能木質バイオマスエネルギー協議会、木の駅・ものづくり合同会社、東京バイオマス地域福祉事業所あぐりーんTOKYO、株式会社UPDATER・
みんな電力、NPO法人埼玉ハンノウ大学、飯能くすの樹カントリー倶楽部、株式会社森のエネルギー研究所、アースデイ東京実行委員会
はんのう市民環境会議

フォトギャラリー

取り組み

1, 学園の脱炭素経営について

自由の森学園は2000年代初頭から脱炭素と地域連携を志向する経営を行ってきた。震災前の2009年、体育館の暖房を担っていた重油ボイラーを廃止し、ペレットボイラーを導入した。燃料のペレットは西川林業地域の製材所から産廃として排出されるスギヒノキの樹皮を燃料化したものである。木質バイオマス燃料であるため実質的にカーボンニュートラルであり、エネルギーの地産地消の取り組みである。東日本大震災と原発事故を経て、私たちの電力消費の構造の再検討を余儀なくされた。学園は原発に依存した電力消費のあり方を改め2014年再生可能エネルギーによる電力消費を開始する。16年には、電力会社をみんな電力に切り替えた。電力供給する発電所を選択できるという特徴に注目した。19年には100%再生可能エネルギー由来の電力の購入を開始する(RE100)。選択講座「環境学」の生徒によって発電所を選定する投票を行う。誰がどのような状況で電力を生産しているかが可視化されたことは教育的にも意味あることと考える。並行して、校舎の暖房を担っていた重油ボイラーも廃止し、エアコンによる冷暖房とし、照明も段階的にLEDに切り替えを進めている。電力消費部門でのCO2削減量は年間およそ340トンと推定される。加えて22年、校舎や食堂の屋上に太陽光発電パネルを設置し、自家消費も開始した。2021年には5棟ある学生寮への給湯と暖房のための重油ボイラーも廃止し、薪ボイラーを導入する。これには地元で結成された木質バイオマスエネルギー協議会の支援をうけ、設計から稼働まで全面的に協力を得た。薪ボイラーとした理由は一つは燃料価格がペレットやチップに比し格段に安いこと、もう一つは稼働を人力に頼るため雇用が生まれる点である。加えるなら、寮生が薪をくべるなど作業に従事できることで、環境教育的な側面も考慮し選定した。薪は、地域の製材所から買う製材端材、近隣の山林から出る間伐材などが主である。バイオマスボイラーは急速な加熱ができないため、大きめの貯湯タンクが必要である。そのためボイラー棟を新築するなど初期費用がかかる。しかし、燃料代は格安なため、施設設備の減価償却費や稼働の人件費を加えても化石燃料より安く運転できている。建設にあたっては、灰や排煙に含まれる放射線を危惧する声が保護者から上がったが、使用する薪やペレットボイラーの排煙を測定することで疑問は解決に向かった。原発事故の影響は皆無ではないものの、数値は基準内である。こうした取り組みの中から、学園で使用している公用車を廃食油を原料とした燃料で走らせたいとの提案が教員から出された。21年と翌年、2台のワゴン車を購入し、BDF(Bio Diesel Fuel)を燃料としての運行を開始した。学園食堂から出る使用済みの植物油や生徒の家庭から回収する廃食油を業者に収め、軽油に代わるBDFを購入するという仕組みである。生徒の活動のひろがりについては次に述べる。

2,生徒による「天ぷら油プロジェクト」の活動

使用済みの天ぷら油を回収して学園のワゴン車を走らせる、シンプルな取り組みではあるが確実に脱炭素に貢献できる活動が生徒の有志によって22年から開始された。学園祭でブースを出し、来場した保護者などから廃食油を回収するところから活動が始まる。翌年春の体育祭では、グランドで使用する電力をBDFを燃料とした発電でまかなうこととなり、地元テレビ局や朝日新聞の取材を受ける。少人数で始めたプロジェクトの活動が一気に全校行事で知られるようになる。その後、学園の脱炭素経営とこれら生徒のプロジェクト活動などを総合して脱炭素チャレンジカップ2024に応募した。結果は文部科学大臣賞(社会活動部門)を受賞することができた。これをきっかけにプロジェクトメンバーが倍化し、11月には学園の公開教育研究会で分科会を主催し、これまでの天ぷら油プロジェクトの活動報告を行い、参加者の環境への取り組みなどを話し合った。この間、4月にはアースデイ東京2024に参加したり、飯能市の環境イベントにブースを出すなど積極的に校外に足を運んでいる。また、メンバーが2回、BDFの精製工場を見学に行っている。廃食油から燃料を製造するプラントを見学し詳細な説明を聞いてきた。学園祭に向けては、油の回収に協力してくれた来場者にお土産としてドングリで制作した置物やキーホルダーをプレゼントした。保護者の間でも廃食油の回収はかなり広まり、知り合いの店から廃食油を預かったり、市内のホテルや施設からも協力を得られるようになっている。生徒たちは、この活動を単なる有志の取り組みで終わらせず、学園の委員会に格上げしたいという話し合いが行われている。3年生が卒業するまでには、新しい生徒活動の体制が構築される見込みである。

児童の変化

<児童・生徒の変化について>

少人数の生徒プロジェクトが一気に全校行事に広がったきっかけの一つが、高校2年生7クラスで行われた家庭科(本校では人間生活科とする)の授業である。学園のエネルギーについてゲストスピーカーとして理事長が招かれ、学園の脱炭素の取り組みとそれへの思いを語る授業であった。学園が積極的に地球環境に関する取り組みを進めていることにたいして、「自森の再生可能エネルギーはせいぜい50%くらいかなと思っていましたが100%と聞いて驚きました。」などの肯定的な感想が多かった。また、「自分の家庭は豊かではないので新電力に切り替えるのは難しいが、自分がこういう学園に入って間接的に貢献できることはうれしい」との感想もあった。その他の感想を列記する。「再生可能エネルギーというと、地球温暖化や資源が無くなるのを防ぐということを連想するが、戦争を続けられないというのは考えたことがなかった。SDGsの問題はそれぞれが関わり合っていることが多いなぁと思ってはいたけれど、再生可能エネルギーと戦争までもが結びついているとは・・・。石油から世界を見てみると他にもいろんな結びつきが見えてきそう。」「私は将来地球に住めなくなっても、自分が生きてる時代に地球で生活できればそれでいいと思っていました。ですが、未来をつくるのは今の私たちで、将来悪い未来になってしまったときの責任は私たちにあるという言葉を聞いてとても驚いたのと同時に納得しました。私が感じている以上に地球温暖化は深刻で、他人事だと流してはいけないと思いました。」

参考資料

4月 アースデイ東京2024に出展・高校ESD講座の開講
5月 BDF発電で運営する体育祭
6月 飯能環境市民フェスタに天ぷら油プロジェクトが出展
7月 中学3年沖縄修学旅行 林業講座白神山地スタディツアー
8月 ワールド・ピース・ラボ広島スタディツアー
9月 サスティナ・ラボスタディツアー(神奈川県藤野)
10月 学園祭でBDF発電、廃食油の回収、環境学九州スタディツアー(佐賀大学海洋エネルギー研究所、玄海原発、五島市沖洋上風力発電)
11月 中学校収穫祭 林業講座足尾スタディツアー(天ぷらカー使用)
12月 音楽祭でBDF発電、林業講座炭焼き 東北と復興スタディツアー(福島県) 1月  2月  3月

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