カリキュラム概要
都道府県名 | 和歌山県 |
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設置区分 | 私立 |
学校名 | きのくに子どもの村学園 きのくに子どもの村小学校 |
学校概要 | 自己決定(子ども自身の発想と実践、自己評価を重視する。)・個性化(一人ひとりのちがいを「よいことだ」と認める。)・体験学習(体験学習…実際的な課題や具体的な仕事にとりくむ。)を基本原則とした私立の小学校。授業の半分ちかくがプロジェクトとよばれる体験学習で、子どもたちが自分で考えて、本物の家を建てたり、道具をつくったり、田畑で作物を育てたり、料理をしたり、演劇をしたりしている。 |
これまでの取り組み | きのくに子どもの村小学校の普段の学校生活は、① 生活の中の実際的な諸問題に題材を求める。② 手足を使う体験的な作業を中心とする。③ 子どもが興味をもって自発的にとりくむ。④ 活動の中で、子どもが自分自身の知識を創造する。といった特徴がある。 子どもたちは自分の所属するプロジェクトを自分で決めることができる。なのでクラスは縦割りで編成されている。さらに、集まった子どもと担当の大人で活動計画を立てるため、計画が変更されることもある。2023年度活動で報告させてもらうクラスは新しくできたクラスである。 |
学年 | 1年生〜6年生(1年4人、2年4人、3年8人、4年3人、5年2人、6年2人:男12人、女11人:合計23人) |
テーマ | ひみつ基地づくりから広がるゴミ問題と地域の歴史 |
目標 | 学校の教育目標は「生き生きとし、好奇心旺盛で、集団生活に必要なマナーを身につけている子ども」である。報告するクラスは「わくわく工房」というクラスで、テーマは「自分たちのくらしを豊かに楽しくしよう」という内容で活動した。気候変動の知識だけを学ぼうとするのではなく、活動の中で地球環境へ愛着を抱き、気候変動への問題意識を高めたい。 |
内容 | 1学期の大きな活動となったのは、クラスのリフォームである。開校から30年経っている木造校舎のクラスの床をカーペットからフローリングに変える作業を行なった。2学期からはひみつ基地づくりをはじめる。どんなひみつ基地をつくりたいか話し合い、建設場所を決め、寸法を図り、床や屋根、壁を張り(縦)200cm×(横)300cm×(高さ)400cmにもなる木造建築物を建設した。3学期の最後には活動経過を本にまとめ、全校生徒と保護者の前で活動の劇を披露した。この日々の活動の中に地球環境へ関心を広げるために、ゴミ問題や気候変動の話題に触れている。 |
大切にしたこと | 活動は子どもの興味関心に沿って進め、広がり深めることを意識している。ひみつ基地を作ってる最中に「ひみつ基地に住んでいた人はいるのか?」という疑問から、アンネの隠れ家を調べた子が出てきた。そこから第2次世界大戦の歴史やアンネの日記の学習に広がる。また、ひみつ基地を建築している現場からたくさんのゴミが出てきた。そのゴミは缶やビニール、鉄屑など様々な種類があり、ゴミの分別方法や学校のゴミの行き先、世界のゴミ問題に目を向ける。そもそもなぜゴミが捨てられているかを調査するために地域住民にインタビューにも行った。このように、活動から興味が広がり、深まって行くことを大切に1年間活動した。戦争や環境問題に触れる中で、担任の方から地球温暖化がなぜ起こるか、環境破壊が進むと私たちの生活がどうなっていくかを話している。 |
スケジュール | 令和5年4月1日〜令和5年3月31日 |
外部協力者 | 和歌山県橋本市彦谷区町さん 橋本周辺広域ごみ処理場エコライフ紀北 |
フォトギャラリー



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取り組み
1学期:1学期間
・1年間でしたいことの話し合いをする。
→クラスがはじまると同時に子どもたちがこのクラスでどんなことをしたいか話し合う。意見は90個ほど出る出た意見は「ものづくり」や「旅行に行きたい」「釣りをしたい」「外で料理したい」というもの。
・釣りと流しそうめん
したいことを話した際に「釣りに行く」という意見が出て人気だったため、釣りいくことに決まる。まずは、材料を調達するために、竹林に出かけ伐採する。受けをつくり倒す方向を考えながら10m以上もある竹を倒した。その竹で釣竿をつくっている最中に「器ができる!」と発見し、急遽器を作り、流しそうめんをすることに決まる。身近なものを活用して暮らしを楽しく豊かにする感覚を得ている(写真1)
→釣りに行くので、川の成り立ち、雨がなぜ降るのかを学習する。地球の仕組みについて理解する。
・クラスのリフォーム
工作をしているときにある問題に直面した。床がカーペットで木屑や粘土のカスがカーペットに入り込んでしまい不便を感じた。さっそく、話し合いを始めた。満場一致で床を張り替えることになり、床板の素材を決め、クラスの面積を図り、材料を発注した。1学期の最後にクラスのリフォームが完了した。力を合わせて実生活に深く関係している仕事成し遂げ、自信をつけたとともに、便利さを実感している。(写真2)
2学期:2学期間
<ひみつ基地づくり>
2学期はひみつきちづくりをメインに活動する。
①話し合い
みんなで1つのきちをつくることになった。どんな形にするかアイディアを出し合い、「忍者屋敷みたいにしたい」「ビー玉転がしで遊べるようにしたい」などたくさんのアイディアが出る。話し合いを重ね、広さ3m×2mの高さ4mになる大きな2階建てのひみつきちをつくることに決まった。
②柱づくり・仮組み(写真3)
骨格となる柱を組み合わせるために、9cm×9cmの角材にほぞほりをした。柱を組み合わせる仮組みでは、最後のネジを入れ終え、ゆっくり後退りして、自立している姿を確認した瞬間、多くの子が両手をあげて喜んだ。
③壁づくり・屋根づくり(写真4)
「驚くぐらいとんでもない秘密きちをつくりたい!」壁づくりの話し合いが白熱した。時間をかけて話し合い、最終的には、クライミングができる壁・いろいろな板を貼り付けてビー玉を転がせる壁・木の枝がついた壁・シンプルな板の壁の4つで、みんなのアイディアを取り入れたものとなった。また、木にロープを貼り、ハーネスをつけて屋根づくりをした。作業をしていた子たちも最初は怖がっていたが、根気よく進め冬休みに入る前に屋根を完成させた。
<ひみつ基地づくりからの広がるゴミ問題>
ひみつ基地をつくるための土台づくりをしていたとき、穴をほっているとゴミがたくさん出てきた。子どもたちはゴミを掘り出しながら、「なんでこんなに昔のゴミが残っているんだろう。」「もしかしたらここには昔お店があったんじゃない?」などと予想をたてはじめた。
その後もひみつきちづくりを進めるたびに出てくるゴミを、コンテナに集めていき、3学期に学校に持ち帰ってきた。子どもたちは、これらのゴミの捨て方(分別方法)をゴミを仕分けている担当の職員に教えてもらった。また、学校で毎週出ているゴミがその後どのように処理されるのかを知るために、橋本周辺広域ごみ処理場「エコライフ紀北」に出かけた。そしてなぜあんな山奥からこれだけたくさんのゴミが出てきたのかを知るために、今度は彦谷の区長さんに会いに行って、むかしの彦谷の話を聞かせてもらった。ひみつきちをつくった場所にはむかし家が建っていたこと、そしてその家が昭和28年の大水害で流されてしまったことを知る。むかしの人のくらしや彦谷の歴史についてより深く知ることができた。
→ゴミに関心を寄せはじめていたので環境問題について学習する。ゴミを燃やすときに出るCO2について触れる。
3学期:3学期間
<分別作業とゴミ処理方法>
建設場所から出たゴミが70年前からあったゴミだということにみんな驚きを隠せずにいた。普段ゴミ箱に捨てているゴミがどのように処理されているかを知っている子は少なく、ゴミ処理場の見学ではたくさん質問をした。また、世界のゴミ問題や環境問題についての講義も行う。
児童の変化
<児童・生徒の変化について>
多くの話し合いを重ねて、みんなのこだわりがぎゅっとつまったひみつきちを完成させた。子どもたちはとても満足していて、自信を深めている子も多い。当初は予想していなかった高いところでの作業もあったが、緊張感を味わいながらも、思う存分体をつかうことで解放感を味わった。完成するまでに、たくさんの問題にぶつかった。そのたびに一人で考えたり、仲間と相談したりする姿があった。失敗したら考え、また試してみる、そんな繰り返しが好奇心をくすぐりものづくりを進める原動力となった。またひみつきちをつくった土地から出てきたゴミをきっかけに、彦谷の歴史にまでつながり、むかしのくらしに関心をもつこともできた。
子どもたちは、この1年間のプロジェクトで自然や地球環境への愛着を持つことができた。しかし、地球温暖化への問題意識や気候変動の理解を深めるところまではもっていけなかったかもと反省している。ただ、地球環境への問題を解決していく際に自然への愛着は最も大事な気持ちであるとも考える。そういう面では自然の素材をたくさん使いものづくりをした今年の子どもたちは、変化したと考えられるだろう。
参考資料
著書・自由学校の設計