学校概要
都道府県名 | 秋田県 |
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設置区分 | 公立 |
学校名 | 大仙市立大曲南中学校 |
学校概要 | 昭和45年創立。秋田県の南部、大仙市の南側に位置し、雄物川と横手川が合流する肥沃な土地に恵まれ、農業を主な産業としている地域に建っている学校。2006年からエネルギー環境教育に取り組み始め、 ・2008~2009年 文部科学省「新しい環境教育の在り方に関する調査研究事業」 ・2010~2013年 文部科学省「環境教育に関する取組を活用した調査研究事業」 ・2013年 全国小中学校環境教育研究大会秋田大会開催 ・2016~2017年 国立教育政策研究所教育課程研究指定校事業(ESD) 等の研究指定を受けている。 現在の生徒数は 69人、通常学級3、特別支援学級3の計6学級。 |
これまでの取り組み | 本校では、2021年から「持続可能な社会の創り手となるための資質・能力」の育成をめざし、その具現化のための手段として、ホールスクールアプローチでESDに取り組み、総合的な学習の時間を軸とし各教科等との連携を図った教科横断的なカリキュラムを構築している。本校のESDの柱は、「食育」「エネルギー教育」「国際理解教育」であるが、3年間のつながりを踏まえて、子ども自身の「ストーリー」を、当事者意識をもって展開できるように支援してきた。また、NPO法人や企業等との「ネットワーク」を構築して実践してきた。これらをベースとして、教育活動全体をESDの視点で捉え、「人」「教材」「能力・態度」のつながりを踏まえた探究的な学びを展開している。 |
カリキュラム概要
学年 | 1年(後半)~2年 |
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テーマ | SDGsの達成のために…「エネルギーと環境~社会との関わり~」 |
目標 | 【目標】持続可能な社会の創り手の育成 【E:教育の目標】「学習で身に付けたい力」・批判的に考える力 ・コミュニケーションを行う力 ・多面的・総合的に考える力 ・進んで課題を見つける力 ・学んだことを発信する力 ・生活に活用する力 【SD:持続可能な開発の目標】「持続可能な開発について考え実践する力」・SDGsに関する知識・技能 ・SDGs達成に向かう意欲 ・課題解決方法の考察 ・行動変容、実践力 |
内容 | 「エネルギー」でのストーリー展開。オーステッド・ジャパンによる洋上風力発電のVR体験後、実際の再生可能エネルギー施設を見学。東北電力による発電の出前授業や、産総研による燃料電池の授業等のエネルギーに関する講座に参加。加えて、高橋敬子氏による「気候変動ミステリー授業」を受講。さらには、修学旅行でオーステッド・ジャパン社を訪問し、自分たちの学習をプレゼンするとともに、洋上風力発電を詳しく学んだ。最後は、前年から連携している一級建築士の指導で、前年実施の「エコハウスを設計しよう」からつながる「エコシティーを設計しよう」という授業でまとめ、SDGs17の目標のつながりや達成の意義を自分事として捉えた。 |
大切にしたこと | カリキュラム・マネジメント:子どもの学びのストーリーを作ること。単発のイベント的な活動ではなく、3年間のつながりを踏まえて、子ども目線でのストーリー展開を大切にしている。その中で、学校外のネットワークを利用することでさらに大きな効果が得られると考える。本校では、ESDカレンダーとESDストーリーマップを活用し、カリキュラム・マネジメントを行っている。 目標と評価:ESDの目標を「E:教育」(学習で身に付けたい力)と「SD:持続可能な開発」(持続可能な開発について考え実践する力)に分けて考え、それぞれに具体的な身に付けたい力を設定している。「E:教育」の評価は18項目のアンケートで行い、「SD:持続可能な開発」の評価は生徒の振り返りや普段の行動観察から行っている。 生徒が当事者意識と見通しをもって取り組み、グローバルに考え、社会のシステムを変革することを目指して、自分や周りの行動を変えていくことを大切にしている。 |
フォトギャラリー
取り組み
前年10月~1学期:70時間
1 未来のエコハウスを設計しよう(技術・家庭科家庭分野、総合的な学習の時間)
①一級建築士松塚智宏氏と旧本郷家を見学しよう
・「過去の家」をエネルギーの視点で見ると…
②積水ハウス「いえコロジーセミナー」
・「現在の家」をエネルギーの視点で見ると…(断熱性能)
③未来のエコハウスを設計しよう
・「未来の家」をエネルギーの視点で、常識にとらわれず設計すると…
※③で出されたアイデアをさらに検討して、「2050年の社会と私たちのくらしアイデア募集」に応募
優秀賞1点、佳作2点(最優秀賞は3年生)
2 SDGs学習スタートアップ「オーステッド・ジャパン環境授業withCEEA」
①洋上風力発電のVR体験(全校生徒)
②海の生物多様性についてのカードゲーム(全校生徒)
・未来の海に関するカードゲームを通してSDGsと生物多様性について考えたり、洋上風力発電の
事業と環境について講演を聞いたりして、身近な生活や社会の中に学習課題があることに気付く。
3 SDGsワークショップ
①朝日SDGsジャーナルの新聞を活用し、SDGsの視点から私たちの生活を考える
4 緑のカーテンプロジェクト
①給食由来の有機肥料を使ってゴーヤを育て、緑のカーテンをつくり、エアコンの電気使用量を削減
5 エネルギー学習フィールドワーク
①風力発電(陸上、洋上)、メガソーラー発電所の見学
③再生可能エネルギーの有用性についてのまとめ
・エネルギーと環境」の視点から秋田の取組について理解する。
2学期
6 アルミ缶・古紙回収(夏休み)
①PTAと協働し、地域全体から回収
②収益で福祉施設に介護用品を寄贈
7 小・中合同クリーンアップ
①川港親水公園のクリーンアップを小・中の縦割り班で実施
②「海と日本プロジェクト」と連携して実施
8 気候変動ミステリー授業
①未来のためのESDデザイン研究所高橋敬子氏をお迎えして
・気候の変動がなぜ起こるのか、その原因と影響、適応と緩和について理解する
9 修学旅行で「オーステッド・ジャパン」訪問
①自分たちのこれまでのSDGs学習の取組をプレゼン
②デンマークの環境対策について学ぶ
・修学旅行で企業を訪問し、エネルギーと環境に関わる企業の取組について知見を深める
10 東北電力出前事業(理科)
①様々な発電についての解説と模型を用いた発電実験
・発電の仕組みについて理解し、再生可能エネルギーの有用性について学ぶ
11 産業技術総合研究所主任研究員による講座
①安藤尚功氏による燃料電池の授業
②燃料電池キットによる製作と実験
・水素を用いた発電である燃料電池について、脱炭素と関連付けて、その有用性について学ぶ
3学期
12 エコシティーをつくろう
①前年度実施した「エコハウスを設計しよう」を拡大し、エコな街づくりを考える
②一級建築士松塚智宏氏との授業
・エコシティについて考え、話し合うことを通して、誰一人取り残さない持続可能な未来の社会について考える。
13 まとめ・振り返り
・「エネルギーと環境」の視点から、持続可能な社会の実現に向けて何ができるか考えることを通して、これまでの学習を振り返る。
児童の変化
(【E:教育の目標】「学習で身に付けたい力」については、別添資料をご覧ください。)
【SD:持続可能な開発の目標】「持続可能な開発について考え実践する力」について、生徒にどのような変容があったのか、振り返りの文章から評価したい。
「気候変動ミステリー授業」の振り返り
この授業で気候変動、地球温暖化について詳しく知ることができたし、深く考えることができました。最初の3つのミステリー問題から関連している記事やグラフをつなげて,今起こっている環境問題を真剣に考えることができました。農業やお米の問題は秋田県にとても関わることなので、気候変動を身近に感じました。気候変動や地球温暖化の原因や、自分たちが今できること、やらなければならないことを考えて、これからの生活につなげていきたいです。そして、SDGsや地球温暖化の問題としっかりと向き合って、積極的に考え、行動していきたいです。
「エコシティーをつくろう」の振り返り
未来はどんな技術や科学が発展しているかどうか分からないけど、人に優しく、そして環境にも優しい技術があればいいと思いました。2班の考えの「微生物を使う」というのがとても面白いと思いました。これからは「省エネ」だけでなく「創エネ」ということも必要だと思ったし、それが先進国だけでなく発展途上国にも広がればいいと考えました。
学習を通して、「世界」を意識するようになっているとともに、当事者意識が芽生えている。学びのストーリーによって、本校が目指す最上位目標である「持続可能な社会の創り手となるための資質・能力」が十分身に付いたと思われる。ただし、これで終わりではなく、これからも当事者意識をもって学び続け、主体的に活動することで、10年後、20年後に真の「持続可能な社会の創り手」となることを望んでいる。
協力・参考
協力
- 一級建築士松塚智宏氏
- 積水ハウス総合住宅研究所、積水ハウス秋田営業所
- オーステッド・ジャパン
- 一般社団法人あきた地球環境
- 日本財団「海と日本プロジェクト」
- 未来のためのESDデザイン研究所高橋敬子氏
- 東北電力秋田支店
- 産業技術総合研究所主任研究員安藤尚功氏
参考資料
- ESDカレンダー(令和5年度版)1年~3年
- ESDストーリーマップ(令和5年度版)1年~3年
- 大曲南中ESD【学習で身に付けたい力】教室掲示ポスター
- 「E:教育」(学習で身に付けたい力)の評価(令和5年度)
- 「SD:持続可能な開発」(持続可能な開発について考え実践する力)の評価(令和5年度)(他のプログラムの振り返りも記載)