朝から断続的に雨が降り寒い中、2日目の会議が行なわれました。それぞれの会議とも議長の選出・議題の採択などの一連の手続きを終え、いよいよ本格的な交渉が始まりました。
・11/7(火)のデイリープログラム(英文)
AWGでは、条約の究極の目標(大気中の温室効果ガスの濃度の安定化)を実現するためには科学的な分析などを早急に行うことが重要としています。今日はそのベースとなるイン・セッション・ワークショップが午前・午後の2回に分かれて行なわれました。その様子をレポートします。
AWG:将来枠組みの議論のベースとなる科学的基礎知識のプレゼンテーション
午前中は将来枠組みを検討する際に必要な科学的基礎知識についてのプレゼンテーションが行なわれました。
AWGを開催中の会議場2(プレナリ−2)
IPCC:最新の科学的な知見をもとに提言
ワークショップはIPCCのメッツ氏によって、2007年発表予定の第4次評価報告書の内容を含んだ最新の科学的知見のプレゼンテーションで始まりました。今回の報告書の特徴は、CO2だけでなく温室効果ガス全体の安定化に関する研究、及び気候変動の影響の緩和措置についての研究を多く取り上げた点です。中でも注目すべき予測として、CO2の排出及び気温の上昇を安定化するには100-300年かかりますが、海面については1,000年後も継続してほぼ直線的に上昇が続くとのグラフを示しました。こうした影響を避けるにはできるだけ早い時期からCO2抑制に取り組むことが必要です。
排出抑制についても、まず先進国が温室効果ガスの排出を抑制しなければなりませんが、ある時点からは全ての国が取り組むことが必要だと指摘しました。
また興味深い事例として、持続可能な発展のための政策(sustainable development policy)を選択してシナリオを描いてみると、非常に効果的に排出を抑制することが可能であるとの結果も示しました。
最後にIPCCの提言として、国際的な枠組みにおいては衡平性と効率性が重要であり、気候変動の緩和・適応措置を持続可能な発展のための政策と統合させることを提言してプレゼンテーションを締めくくりました。
EU:気温上昇を2℃に抑えるために協力を
EUを代表してメツガー氏からは、気候変動による影響、被害がすでに世界各地で現れているとの報告がありました。しかしアフリカの被害はそれほど報告されていません。これは現状では経済的損失を保険の支払金額を集計しカウントしているためです。アフリカでは相対的に保険会社が少ないためデータがないのです。被害報告が少ないからといって、アフリカが気候変動の影響に対して脆弱であることに変わりはないと指摘しました。
EUは気温上昇を2℃で抑えなければ危険だとの認識で一致しています。今すぐ対策を始めれば低いコストでより多くの排出抑制が達成できるとの研究結果を示し、2050年までに15〜50%のCO2排出を抑制しなければならないとしています。そのためにも世界全体が協力して努力していくことが重要だと締めくくりました。
ノルウェー:成功した政策例を披露
ノルウェーには政府から独立した委員会が設置され、技術的に最もふさわしい地球温暖化対策を検討しています。委員会ではすでに様々な提案を行なっており、多くが政府・議会によって議論された後に政策として採用・実行されているそうです。また同時に「気候問題啓発キャンペーン」を長期間継続して行なっているとのこと。結果としてノルウェーでは1990-2005年の間に7.43-10.03MtのCO2排出を削減、1990年比15-20%の削減を達成しました。
この委員会の委員長であるドブランド氏は「委員会が提言する政策を実施すればノルウェーは1990年比30%の温室効果ガスを削減可能だ」と述べたのに対し、UNFCCC事務局長のデ・ボーア氏が「ノルウェーの削減目標を30%にしましょうか?」とコメントする一幕もありました。成功した政策として各国からも質問が相次ぎました。
日本:将来枠組みについて提案
日本からは西村地球環境問題担当大使がプレゼンテーションを行ないました。西村大使は「エネルギーを節約できるので使いません」と宣言しスクリーンを使わず口頭でプレゼンを行ないました。そして将来枠組みのあるべき姿について、削減目標数値や遵守規定を設けることでは気候の安定化は達成できない、(京都メカニズムのような)ツールや戦略の選択肢を増やさなければならないと述べました。
プレゼンテーションを行なう西村大使
この西村大使の発言に対し、サウジアラビアからは「附属書国である日本がリーダーシップをとるべきではないのか」、中国からは「誰の将来枠組みについて話しているのか」といった質問がされました。途上国は将来枠組みにおいて削減目標を課されることを避けたいと考えており、その思いが透けて見えた質問でした。
・ワークショップのプレゼンテーションはUNFCCCのサイト(英文)でご覧いただけます。
NGOからは「日本政府は京都議定書の目標である1990年比6%削減を何が何でも達成すると明言している。また将来枠組みについても非常に意欲的な発言をしている。しかし日本の排出削減の状況は国別報告書やインベントリをみれば明らか。途上国などに将来枠組みに参加するよう説得するためにも国内の対策をすすめて温室効果ガスの排出削減達確実に達成し、さらに次期枠組みでもより大きな削減をする姿勢を見せることが不可欠だ」との批判が出ていました。
気候ネットワークによるCOP12レポート「COP12/MOP2通信 kiko」
午後には引き続いて附属書国の排出傾向、これまでの経験を含む様々な国々での政策と技術による削減可能性、削減による費用と効果に関する情報についてのプレゼンテーションが行なわれました。
一連のワークショップをもとに将来枠組みをどうするかの話し合いが引き続き行なわれます。今回の会議で大筋を決めることが期待されていますが、途上国の姿勢は今後の交渉が容易でないことをうかがわせました。
コラム:COP12バッグが人気
今年もCOP12のロゴが入ったバッグが参加者に配布されました。ケニア政府が設置したブースではバッグの配布にあわせてサファリツアーなどの案内も行なっています。
COP12バッグとパンフレット類
コラム:展示ブースでも活発な情報交換
本会議場前のコンコースにはNGO、研究機関などが展示ブースを構え、情報提供をしています。日本からもいくつかの団体が出展しており、世界中の研究者や政策担当者などと活発に交流しています。
国立環境研究所の展示ブース。「持続可能な開発のための低炭素社会を目指すグローバルな挑戦」という日英共同のプロジェクトを行なっており、通りかかる人の注目を集めていました。
COP12へ参加している国立環境研究所代表団の報告