初めて会う人との定番の話題の一つ、出身地。
COP会場でもそれは例外ではなく
「どこから来たの?」という会話がよくあります。
「日本」と答えると「日本のどこ?」。
そこで「仙台」「宮城」というと「それどこ?」と続きますが、
「地震があったところ」と言うと「あそこか」となります。
正確な位置を知っているかはさておき、
東日本大震災が他国にも大きな衝撃を与えたことの
一端を垣間見たように思います。
そんなあいさつを何度か交わした後に聞いたサイドイベントは、
赤十字やSave The Children、ユニセフなどが
共同で行っている災害による被害の低減(リスクリダクション)のための
教育・啓発活動をテーマにしていました。
Save The Children からは、
東日本大震災で現地での支援活動を行ったことや、
東北の子供たちが「3月11日に彼らは自分の身を守るため、
そしてそれどころか友達の身を守るためにも行動したのです」と報告がありました。
災害による被害を低減するための教育…といっても、
その成果は「実際に何か起こるまでわかりません」と彼らは言います。
では、何のために教育をするのか?
その答えは「教育は行動を変えるからです」ときっぱりと言います。
そして中でも子供や若者に対する教育が大切なのは、
その影響力の大きさからです。
自分の子供が
「お父さん、お母さん。地震が起こったら、
台風が起こったら○○に逃げるんだよ」
と家庭で話すことで、大人の行動をも変化させる力を持っています。
そのような教育活動を行い、
持続していくために必要なこととして、
インドネシアの気候変動委員会のアマンダさんは
「法的根拠」と挙げます。
たとえばインドネシアでは国内の教育システムに関する法律の中で、
特別な教育をすべき分野として「災害」が、
そして災害マネージメントに関する法律の中でも同様に
教育の必要性が定められているそうです。
では、そのような教育・啓発活動を行う上での課題は何なのでしょうか?
「『資金がない』などはよく聞く話なのでやめましょう。
何かハッとするようなものでね」
という司会者の(ハードルを上げた)投げかけに出てきたのは、
「時間とスペース」。
たとえば、リスクリダクション教育のための政策が必要だとしても、
その政策作りには政治にかかわる人、
環境の立場から意見を言う人、人権、教育…と
さまざまな人が関わることが必要です。
しかしみんながみんな忙しく、
メールで連絡してもそれを見る時間がなく事がなかなか進まない。
それを解決するために時間と会うスペースが必要で、
それにそもそも政治家にリスクリダクション教育の必要性を
理解してもらうことが必要であると訴えていました。
また、もう一つは情報を集め、把握し、記録することであるといいます。
地震に比べると気候変動による自然災害は、
洪水や干ばつなどそれらが起こる期間や状況を
特定しやすいという違いがあります。
そこで被害を少しでも少なくするために、
何か起こった際にはどんな状況でどんな被害がどれくらい起こったかを
記録していくことが重要であるとのことです。
その後の質疑応答は
「(今回のサイドイベントの性質上)できるだけ若い人からの質問がほしいですね。
そこのあなた、自分が一番若いと思っているから手を下さないんだよね?」
とジョークを交えて進みます。
南アフリカの参加者から「言語の問題」を
どう解決したらよいかという質問が出ました。
南アフリカはアフリカーンスやズールー語など
たくさんの言語があって、教育といっても翻訳にも一苦労、
教材を作るのが大変だとのこと。
それに対する回答は…
「何よりも『相手』が『わかる』ということが重要です。
同じ言語を話す相手であっても、
例えば『レジリアンス』『気候変動』『適応』…
その言葉で、あなたが伝えたいと思っている相手に伝わりますか?
一言の言葉が訳して何行にも渡っても構いません。
『相手』が『わかる』ということが大切です」
最後に登壇者の一人はこうしめくくりました。
「わたしたちの、そしてあなたの責務は、
自分自身は『力を持った存在である』と認識することです。」
教育を受ける側、施す側のどちらにあっても、
自分一人では無力だと感じてはいけないという
シンプルかつ重要な宿題が出た中、
報告は盛況のうちに終了しました。
執筆:江刺家 由美子
(宮城県地球温暖化防止活動推進センター)