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土地利用、土地利用変化と林業(いわゆる吸収源)

土地利用、土地利用変化と林業(いわゆる吸収源) (京都議定書第3条3項、4項) 

二酸化炭素は、動植物の呼吸や有機物の分解を通じて大気中に放出される一方、光合成による植物への固定(吸収)、または海などに吸収されていると考えられています(炭素循環)。陸上生態系の中では、森林が一番二酸化炭素を吸収していると考えられます。しかし、海への吸収量はもちろん、実際の陸上生態系または植物による吸収・排出量は、植物の種類、年齢によっても様々なため、化石燃料の燃焼による排出などに比べ、現時点では不確実性が大きいといわれています。こうしたことから、京都までの交渉会議では、環境NGOや途上国などは、森林による吸収分を削減目標に算入することには強く反対しました。COP3直前まで日本政府も反対の立場でした。
ところが、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど森林を有する国々は、削減目標の計算に森林が吸収する量も考慮すべきだと強く主張し、京都議定書の削減目標の計算に森林が吸収・排出する量も算入することになりました。議定書では、「1990年以降」の「直接的かつ人為的」な「植林・再植林・森林減少」といった活動から得られる吸収・排出量に限って算入できることになり(第3条3項)、算入方法として、吸収量を基準年の排出量(1990年)の算出では考慮せず、目標達成期間の排出量の算出には考慮する「グロス-ネット方式」が採用されました。
また、IPCCやSBSTAなど科学的な助言を考慮して、第3条3項で認められている吸収源の範囲の拡大することについてさらに議論することになっています。だたし、結論は第2約束期間(2013年から)に適用されることになっていました。しかし、決められた吸収源活動が、1990年以降に行われる場合には、これらの追加的な吸収源から得られる吸収・排出量を第1約束期間(2008年から2012年)から削減目標にも使うことを選択できるとされました。(議定書第3条4項)
2000年8月1日には、5月に発表された「土地利用、土地利用変化と林業に関するIPCC特別報告書」をふまえ、第3条3項に定められている「植林・再植林・森林減少」活動に関する吸収量と第3条4項に含む活動とその吸収量のデータや意見が各国から提出されました。
このようなデータをもとに議論が進められ、COP6で最終合意が目指されましたが、やはり第1約束期間には、議定書第3条3項以外の活動から得られる吸収量を削減目標達成に使うことを認めるべきではないとするEUや途上国と、議定書第3条3項以外の活動から得られる吸収量も積極的に削減目標達成に活用したい日本やアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの意見が対立し、交渉が決裂しました。
COP6パート2では、議定書第3条4項にもとづき「森林管理」、「耕作地管理」、「植生の回復」、「牧草地管理」という4つの活動を行って得られる吸収量も削減目標の達成に使えることが決まりました。しかし、「森林管理」に関しては、多量に吸収量を得られる国がでてくるため、削減目標達成に使える量に上限をもうけることになりました。(上限には、共同実施(JI)の「森林管理」事業から得た排出削減単位(ERUs)も含まれます。)上限は、国の事情に合わせて、国別に設定されることがきまり、日本の上限は1300炭素万トンとなりました。ロシアは、1760炭素万トンという上限が決まりましたが、科学的な根拠にもとづいた数字ではないと異議を申し立て、ロシアの数字だけCOP7で再検討することになりました。
COP7では、ロシアは結局3300炭素万トンに上限を変更することが決まりました。その他に、議定書第3条3項、第3条4項から得られる吸収量をほかの排出削減量と区別し、管理できるように、吸収単位(RMUs/Removal Units)と呼ぶことに決まりました。 このRMUsを約束期間中毎年発行するか、約束期間末に発行するかは、締約国が各吸収源活動ごとに自由に選択できます。しかし、RMUsが余ったからといって、次の約束期間に繰り越すことは出来ません。
クリーン開発メカニズム(CDM)で実施する「植林、再植林」事業から得られる認証排出削減量(CERs)の上限(基準年の排出量の1%まで)も考慮すると、日本は削減目標6%のうち4.9%を吸収源で達成してもよいことになりました。また、国際的な環境NGOのWWFは、京都議定書で排出削減目標の 3.4%に相当する吸収量が認められたことになると分析しています。これは、先進国全体での吸収源を除くと削減目標は、5.2%から1.8%になったと言い換えることができます。
ただし、ここで認められた上限まで実際、吸収量を得ることができるかは、実際に事業をしてみなければわかりません。

関連情報

* 条約事務局(UNFCCC)の吸収源ページ(英語)
これまでの経緯や関連文書の一覧などを掲載。

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