「STOP!温暖化シンポジウム 〜南太平洋NGOメンバーと地球温暖化のこれからを考える〜」
2001年12月25日、24日に9月から世界18カ国をめぐった地球一周の船旅からもどったばかりの国際交流NGOピースボートの船(オリビア号)の中 で、「STOP!温暖化シンポジウム 〜南太平洋NGOメンバーと地球温暖化のこれからを考える〜」が開催されました。 このシンポジウムを主催したのは、国際交流NGOピースポート と国際環境NGO地球の友ジャパンで、地球一周の旅の間、船上で「NGOフォーラム2001」を開催し、島が海に沈むという脅威にさらされている南太平洋 のNGOメンバーや政府代表者とともに、ワークショップなどで意見交換をし、日本政府への地球温暖化防止の提言をまとめました。今回の地球一周の旅には、 約600名が参加し、現地の深刻な状況を実際に目の当たりにし、自分達に何ができるのか考えました。
シンポジウムでは、オリビア号で来日したクック諸島、サモア独立国、タヒチの人たちが深刻化する地球温暖化への影響の現状報告するとともに、後半は国会 議員も招かれ、温暖化防止の地球的取り組みの第一歩といえる「京都議定書」の早期発効に向けた活発な意見交換も行われました。以下は、南太平洋からの参加者による報告の内容です。
イオアネ・エツゥアレさん
(サモア保護区保護官:サモア独立国)(写真右)
サモアに住む人は、土地と特別のかかわりをもっています。「土地は、先祖からうけついだものではなく、未来の子ども達から預かりものである。」というサモアの人と土地との特別なかかわりをとてもよく表すことわざがサモアにあります。
サモアは、ポリネシアで2番目に島数の多い群島で、人口は約18万人です。私達は、土地と水の恩恵を受けて生きてきました。天然資源に頼ることが唯一の生活を維持する道で、何千年にもわたって、何世代も土地を守ってきました。今を生きる私達の使命は、その土地をいかに持続可能な形で維持していくかということです。それはサモアの文化ともいえると思います。
しかし、月日が経つにつれ、変化がでてきました。人々のライフスタイルがかわり、サモアの土地や資源が変化してきました。人は欲を出して、もっと物が欲しがるようになりました。それが、土地や資源に変化をもたらしたのです。サモアは、先進国で使われた中古車や中古機械の廃棄場となり、不燃ゴミが海につもり、海が汚染されています。
温暖化の影響もあります。先進国からの温室効果ガスの排出によって、地球温暖化がおこり、その結果、海面上昇が引き起こされ、我々の土地は消えつつあります。また、温暖化の影響で、サイクロンの上陸頻度が増え、高波のあと新しい病気が広がっています。我々の資源、土地、文化が消えつつあります。
ダイアン・マクファドズェンさん
(太平洋州島しょ国気候変動援助計画コーディネーター:クック諸島 )(写真左)
クック諸島は小さな島々からできている小さな国で、資源は限られていますが、海抜の高い火山から環礁などの低地などとても自然環境が多様な国です。
私達の国は、とても地球温暖化の影響を受けやすい環境にあります。島しょ国の一人当たりの二酸化炭素排出量はとても少なく二酸化炭素(CO2)換算で約 1.1t(ちなみに日本は二酸化炭素(CO2)換算で約9t)、世界の二酸化炭素総排出量に対してごくわずか、オークリッジ国立研究所1998データによると世界の 0.000001%です。(ちなみに日本は5%)このような太平洋の島国が温暖化の影響をうけるのは皮肉な事実だと思います。
クック諸島には15個の島があり、土地のある部分は、約240km2しかありません。首都のあるラロトンガ島は、人がすむ典型的な島で、海岸線に沿って人がすんでいます。とても海面上昇の被害をうけやすい状況になっています。他にも、健康、農業、生物多様性に温暖化の影響がでると考えられています。
特に、大半の島は外側がサンゴ礁で囲まれていて、サンゴ礁が自然の防波堤の役割を果たしていましたが、温暖化による気温の上昇で、サンゴが白化し、死に絶え、防護作用がなくなってきています。私達の生活にも影響が出ています。サンゴななくなり、魚が減少し、食料が少なくなってきました。また、最も海抜が 高いところが2mくらいしかない環礁などは海面上昇の影響を受け、消えかかっています。
1997年にはマニヒキ島が、マーティンというサイクロンに見舞われ、高波が島を襲いました。人々は助かるために、流木にしがみつき、木々に体を縛り付け、高波をやりすごすしかありませんでした。サイクロンは普段通らない経路をとおりました。このサイクロンで、島民の約5%が影響をうけ、島のインフラは なくなってしまいました。このため、女性や子どもはラロトンガ島に避難せざるをえなくなりました。島には男達だけが残り、島の再建にあたりました。今でも次のサイクロンが襲ってくると思い、島に戻れない人もいます。
他にも影響はたくさんあります。温暖化により降水量が変化し、私達の主食であるタロイモ栽培が4年間干ばつの被害にあいました。タロイモ以外にも様々な作物も影響を受けており、人々は替わりの作物を探さなければならなくなっています。また、今までなかった害虫が発生するなど深刻な被害が出ています。気温が温かくなることで、蚊が増え、その結果、蚊によって伝染する病気デング熱が流行しています。
クック諸島は、こういった影響を少しでも緩和したいと考え、気候変動枠組み条約も京都議定書も批准しています。日本にも率先して京都議定書を批准して、対策を実行し、議定書の削減目標をまず、達成してほしいです。
ガブリエル・テティアラヒさん
(市民団体ヒティ・タウ代表:タヒチ)
タヒチは今もフランスの植民地です。我々の国は、先進国の植民地になり、先進国の核実験場となり、そして先進国が排出した温室効果ガスのために地球温暖化 がおこり、地図からも消え去ろうとしています。我々の国がこのような深刻な問題に直面していうということが余り知られていないのは非常に残念に思います。
我々にも皆さんと同じように、我々の土地で我々の生活をする権利があります。ナウルやキリバスは消えてなくなる運命にあります。私は、自分の国が同じ運命になり、オーストラリアに住めといわれたら、死んだ方がマシだと思っています。
南太平洋からの参加者と意見交換する国会議員(左から福山哲郎氏、武山百合子氏、岩佐恵美氏、中村敦夫氏、辻元清美氏)(写真右)
イオアネ・エツゥアレさん
(サモア保護区保護官:サモア独立国)
皆さんが温暖化対策の影響を深刻に受け止め、対策の実行を真剣に考えていると聞き、自分ひとりだけがこの問題を考えている孤立した立場ではないということが分かって、安心しました。
しかし、問題が何なのかがわかっているのに、なぜ、解決にこれだけ時間がかかっているのか本当に不思議に思ってしまいます。まず、行動を起こすことが大切だと思います。言葉より、行動のほうが雄弁な場合があるのですから。