第22回締約国会議(COP22)

パリ協定第1回締約国会合、始まる

 COP22も折り返し地点を過ぎました。2週目に入ってから、参加者もぐっと増えたように感じます。COP22会場は仮設の建物なのですが、人通りが多いところにあるお手洗いや洗面台が既に壊れ始めています。最終日までもつといいのですが…。


写真1:会場近くの通りを走る馬車

 

 さて、今日(2016年11月15日)も注目すべき1日でした。パリ協定第1回締約国会合(CMA1)が始まったのです。続いて、COP22、CMP12及びCMA1のハイレベル会合の開幕セレモニー(以下、開幕セレモニー)も開催されました。

 世界中からたくさんの首脳・閣僚らが、記念すべきCMA1に出席するためにマラケシュに集まりました。各国の首脳・閣僚らが会場に入場する際、モロッコ国王ムハンマド6世、潘基文国連事務総長、メズアールCOP22議長、エスピノサ気候変動枠組条約事務局長が出迎えて、記念撮影をしていました。


写真2:プレナリー会場に入場する各国首脳・閣僚らと記念撮影をするモロッコ国王ら

 

 セキュリティーの関係上、CMA1全体会合及び開幕セレモニーが行われるプレナリー会場への入場が厳しく制限されたため、ほとんどのCOP22参加者は、もうひとつのプレナリー会場で中継を見ていました。筆者もその一人です。


写真3:CMA開会会合及びCOP22、CMP12及びCMA1のハイレベル会合の開幕セレモニーを傍聴する人たち。傍聴席が足りず、立って見ている人がたくさんいました。

 

 まず、メズアールCOP22議長がCMA1の開会宣言を行い、CMA1が始まりました。メズアールCOP22議長は、今が「歴史的な好機」であるとし、パリ協定の採択から1年以内という異例の早期に発効したことは、パリ協定の目的の達成に向けて、各国が気候変動対策に取り組む各国の決意の表れであると述べました。

 CMA1はいったん休会し、明日(16日)再開されます。

 開幕セレモニーでは、モロッコ国王ムハンマド6世、潘基文国連事務総長を始め、エスピノサ条約事務局長、16歳の少女マリアンヌさん、フランスのオランド大統領らのスピーチがありました。

 モロッコ国王ムハンマド6世は、COP 22を、パリ協定の実施における「決定的な転換点」と位置づけました。遵守できないような決定に合意するように各国に対してプレッシャーを与えるようなことはしないこと、そして、先進国に対して、途上国への資金支援を2020年までに年間1000億米ドルに引き上げるという約束を守ることを、そして、すべての国に対して、技術移転の促進に取り組むことを、それぞれ促しました。

 潘基文国連事務総長は、在任中に得た教訓として、国際社会における多国間での取り組みや政治的リーダーシップが重要であること、すべての主体の参加を確保する必要があること、気候変動対策の合意に向けた、気候科学の重要性や気候正義の概念の普及等について国連が担う役割が重要であることを挙げました。

 トムソン国連総会議長(フィジー)は、気候変動による影響はすべての国が現在感じていることなので、将来世代のためだけでなく、現世代のためにも、気候変動問題に取り組む機運を維持していこうと各国の首脳・閣僚に呼びかけました。

 エスピノサ気候変動枠組条約事務局長は、低炭素で気候変動影響にレジリアントな(筆者注:「レジリアント」は、「強靭な」としばしば訳されますが、「しなやかな」という方がもともとの語のイメージに近いです。気候変動による影響を受けて、回復できないのではなく、かといって、何があってもびくともしないわけではないという世界が望ましいとされています)世界への移行は、先住民、若者、女性などのグループも一緒に取り組んでいくべきだと訴えました。

 若者代表のマリアンヌさん(モロッコ)は、各国の政府代表に対し、各国の違いに注目するのではなく、その違いを乗り越えた先にあるものを見据え、世界で最も気候変動影響に脆弱な人々と結束して、気候変動影響にレジリアントな世界を構築していくように、呼びかけました。


写真4:開幕セレモニーに参加した首脳・閣僚らの記念写真(写真出典:ENB)

 

 そして、筆者にとって、この開幕セレモニーで最も印象的だったのが、オランド大統領(フランス)のスピーチでした。

 オランド大統領は、フランスは、世界を主導するかたちで、気候変動対策に取り組むとしました。また、パリ協定が既に発効していることから、もはやパリ協定採択前に戻ることはあり得ないとし、世界の政府、産業界、金融業界、NGO、市民らは、様々なイニシアティブを実践し、具体的な解決策を見つけようとしていると述べました。さらに、オランド大統領は、米国は、自らが掲げた気候変動対策目標を尊重すべきであると強調し、フランスは、約100か国のパリ協定批准国のために、率先して、トランプ次期大統領と決意をもって対話を行うとの決意を示しました。そして、「各国にはたくさんの違いがあるが、私たちが共有しているもの、すなわち、私たちの地球という存在によって、私たちは結びついているのだ」と述べました。

 フランスも、来年(2017年)、大統領選挙があるので、オランド大統領の任期は残りわずかです(筆者注:COP22会期後の2016年12月2日、オランド大統領は、2017年の大統領選挙への出馬を見送ることを表明しました)。「自身が今後も大統領であり続けるかわからないのに、『米国と決意をもって対話する』なんて、できもしないことを言って」というようなことを言っていた人がいました。

 確かに、その方が言うように、オランド大統領の言う「決意を持っての対話」がどのようなものかはわかりませんし、たとえ、それが実現したとしても、米国次期大統領がどう反応するかは未知数です。しかし、パリ協定を採択した議長国のトップとして、トランプ次期大統領の当選によって不安視されることも少なくないパリ協定の行く末を守るという意思を各国に示したのは、素晴らしいと感じ、これこそが政治家が果たすべき役割だと思いました。


写真5:開幕セレモニーで演説するオランド大統領(フランス)(写真出典:ENB)

 

 パリ協定の採択は、世界全体の気候変動対策の転換点となる大きな成果ですが、その中身を見ると、今世紀末までに世界全体の気候変動対策が目指すべき水準と、それを実現するための制度の大枠を示しているだけです。パリ協定に描かれた未来(2℃目標や今世紀後半に温室効果ガスの人為的排出と吸収とを正味でゼロにすること)を実現するためには、各国が自らの削減目標を、パリ協定の目的や長期目標に沿ったものに引き上げ、その達成に向けて着実に努力を積み重ねていかなければなりません。パリ協定に描かれた未来の実現には、技術革新だけではなく、エネルギー源の転換などの社会経済システムの抜本的改革が必要です。

 国際社会は、パリ協定に描かれた未来の実現を目指して、着実に歩み始めています。それを実感した開幕セレモニーでした。

 

文・写真(写真4、5を除く):久保田泉(国立環境研究所社会環境システム研究センター主任研究員)

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